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念伍の巻 ページ32






外の世界はこんなにも大きいのか、と私は思い知らされた。

流石将軍様のお膝元というべきか。ずっと吉原の檻の中で過ごしていた私にとっては眩しすぎるほどきれいな街並みだった。

私はその街並みに見とれていたのか、横で渉様が見つめているのを気づかなかった。

奥の方で渉様の家臣が騒ぐ中、私がある言葉が口をついて出た。心の底からの言葉だった。

「外の世界は大きいですね。」

そういうと隣の渉様は満足そうに笑った。いつも通り口の端をつり上げるような笑みで笑った。

「ああ、Aは吉原から今まで出たことがなかったんだよな?江戸は平和で大きい。家康様が作り上げられた町は素晴らしいだろう?」

「ええ、ただ、貴方様に教えられるとは。気が進みませんね。」

皮肉を挟んで、私は渉様の翡翠の目を見つめた。この時代には似合わない美しい瞳。触ったことはないがふわふわとした茶色の髪。

身長が低いとは感じられない。むしろ大きく見える。頼もしいとすら感じる。

「皮肉は要らない。江戸城まではもう少しだ。」

といって翡翠は漆黒を見つめ返す。翡翠と漆黒が空中でぶつかる。

それにしても、渉様の家臣の一人を私は知っている気がする。紫髪の桔梗の目をした青年を。

確か月崎・・・。大名でいることで精いっぱいの小大名だったような気がする。特徴はその桔梗色の目。

幼少のころ。確かまだ売られる前・・・。禿として吉原に売られる前に、伊万里と月崎は戦をした。

といっても幼少のころ。乳母に抱かれてみていたころの年代だ。3つか4つかだろうか。

あの青年は____渉様の家臣は、私と同じか少し上の年代だろうか。どちらにせよ、元服もしてないだろうから戦には出ていないだろう。

が、伊万里が悪く言われていたとしたら。あの青年にも伝わっているかもしれない。

「A、言っておくが本名は言うな。遊女名で暮らせ。」

「ああ、伊万里が家臣の家に手を出していたら密告されますからね。そのぐらいわかりますよ。」

私はそんなに馬鹿じゃないぞ、と笑ってやった。

それにつられて渉様も笑った。江戸はもう少しだ、と口を開きながら。

桔梗が私を見つめているとも知らずに、私と渉様は時々会話を交えながら江戸城へと急いだ。

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設定タグ:歌い手 , 和風 , 浦島坂田船   
作品ジャンル:恋愛
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イチゴミルクキャンディ@サブ垢(プロフ) - PE@みたらし団子バカさん» わー!ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月18日 19時) (レス) id: e98fc17c66 (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - 更新頑張ってください! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - これは私の好きな種類の話だ! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
いまりちゃん - もでらーと。さん» ありがとうございます!!(パソコンから返信しています。)そしてそしてもでらーと。様は様々な小説を書いていらっしゃるのですね!お星さまが坂田さん色で憧れます(笑)更新頑張ります! (2019年8月3日 22時) (レス) id: 42f8b00619 (このIDを非表示/違反報告)
もでらーと。(プロフ) - おもしろいです…!私、歴女&crewなので超嬉しい組み合わせです!更新楽しみに待ってます! (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5d5b1bd419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イチゴミルクキャンディ | 作者ホームページ:プロ野球  
作成日時:2019年7月20日 20時

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