念弐の巻 ページ28
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なんとか花魁の許しも得て、私が吉原から去る日が近づいてきた。
聞けば今渉様はお忙しいらしい。武士だものな、普通なら吉原には行かずに稽古をしているものだから。
にわかに周りが噂しているのが気になるが。
「なぁ、藍。なにがあったんだ?」
「和歌!!聞いた?ついに家康様が豊臣家と戦をするらしいのよ!」
豊臣と?私は疑問に思った。なぜ今なのだ、決して今出なくてもよいとは思うのだが。
遊女の端くれが政に口を出す、などのことは御法度なのだが。よりによって今か、もしかしたら渉様が来る時期が少し遅れるかもしれない・・・。
買われる立場の私が言うのもなんだが、渉様は徳川の譜代大名。江戸に住んでいるということはずいぶん家康様にも好かれているのだろう。
となると間違いなく豊臣の戦に駆り出される。嫡男であってもいくだろう。
その前に私が買われるとしたら、豊臣が狙うのは江戸か・・・。大阪で手一杯となったらいいのだが。
西国では太閤様の人気はまだ高い。関ヶ原の戦いによってなり下がったとはいえ、手ごわいだろう。
「和歌様!和歌様!ご指名のお客様でございます!」
ご指名?私のような遊女を指名する・・・。そんな人は一人しかいない。ついに来たか、この時が。
戦が始まる前に買うとは。江戸は大丈夫という確信があるのだな。自信家で。
「今行く。じゃあな、藍。」
「うん、元気でね。」
幼少期からずっといた、吉原遊郭に別れを__________
「A、きたか。」
「渉様。案外はようございましたね。豊臣との戦の噂は誠でしょうか?」
直球で聞きすぎたか、と一瞬思案したが、私はやんわり聞くというのができない。今私にできる聞き方はこれしかない。
何が何でも気になるというほどではないが。隣の家臣らしきものも面食らってるしな。こんな遊女を主君が買うなんて驚いているのだろう。ちょっと失礼だぞ。
「なんだしっていたのか。立ち話はなんだ。部屋で待っていてくれ、払ってくる。」
そういうと3人の家臣を置いて吉原の中に消えた。
家臣らしきものたちは顔を見合わせ、私の顔を見て、檸檬の目の家臣が言った。
「さぁ、行きましょう。外は危険です。」
「あ、はい・・・・。」
なんだなんだ、浦田には美男しかいないのか。遊女や花魁が見たら騒ぎそうな顔をしていやがる。
他の二人も美男だ。私はあまり顔に興味がないが、こんなやつらがいたら吉原は大騒ぎになるだろうな。
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イチゴミルクキャンディ@サブ垢(プロフ) - PE@みたらし団子バカさん» わー!ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月18日 19時) (レス) id: e98fc17c66 (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - 更新頑張ってください! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - これは私の好きな種類の話だ! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
いまりちゃん - もでらーと。さん» ありがとうございます!!(パソコンから返信しています。)そしてそしてもでらーと。様は様々な小説を書いていらっしゃるのですね!お星さまが坂田さん色で憧れます(笑)更新頑張ります! (2019年8月3日 22時) (レス) id: 42f8b00619 (このIDを非表示/違反報告)
もでらーと。(プロフ) - おもしろいです…!私、歴女&crewなので超嬉しい組み合わせです!更新楽しみに待ってます! (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5d5b1bd419 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イチゴミルクキャンディ | 作者ホームページ:プロ野球
作成日時:2019年7月20日 20時