無言の圧力 ページ9
締切明けの日曜日。
何とか間に合わせることができ、安堵の息を漏らした。
あの期間にしてあの量。
本当に死ぬかと思ったよ。
昨今は不景気で翻訳家を雇う費用が足りないらしく、殆どの翻訳の仕事が私に送られてくる。限りなく黒に近い労働時間だ。まぁ、大手の出版社じゃないし、仕方ないといえば仕方ないけど。
「久しぶりのお休みだ。
何しようかな……__」
取り留めもなく振り返ると、そこには例の彼。いや、予想はしていたけども。驚いてしまって口を開けたまま固まると、彼はそんな私を不思議そうに見つめた。
イルミ「へぇ、休みなんだ。」
「はい。相変わらず神出鬼没ですね。」
イルミ「ターゲットを前にして堂々と現れる暗殺者なんて居ないと思うけど。」
……それって、まだ私の事を殺す気があるってこと?冷や汗をかいて目線を泳がせると、「冗談だよ。」と彼は告げた。
その無表情のどこにジョークを読み取れば良いのか、と言い返したくなるけども、また針を向けられてしまっては困るので仕方なく飲み込んだ。
(…それにしても、案外冗談とかいうタイプだったんだな。)
イルミ「…何?」
「い、いや何でも。」
*
イルミさんがここに居座ってから早数時間。
折角の休みだからネットサーフィンでもしながらゴロゴロしようと思っていたのに、ずっと見つめられているようではやりずらい。
「…あのー……」
恐る恐る尋ねると、彼は無表情のまま「何?」と返す。
「その、お仕事とか大丈夫なんでしょうか。」
イルミ「次のまでは暫く空いてるよ。」
「……そうなんですね。」
そう言われてしまっては、追い返す台詞も続けられないじゃない。いっその事修行のひとつとでも考えることにしようか。…何に役立つのか分からないけど。
そんな葛藤を知ってか知らずか、彼は立ち上がるとこう言ったのだ。
イルミ「散歩でもする?暇なんでしょ。」
いや、そう来るか。
私が誘い出そうとして失敗したみたいになってるけど。
イルミ「行かないの?」
「めんどく…いえ、勿論!!喜んで!」
…はぁ。
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かにかま(プロフ) - セナさん» コメントありがとうございます。誉められて伸びるタイプなので、そう言って頂けて嬉しいです笑 (2020年6月6日 20時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
セナ(プロフ) - あまりに面白くて一気読みしてしまいました!素敵な作品をありがとうございます! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 9a1a35c746 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - たまご登りさん» コメントありがとうございます。楽しんで頂けたようで何よりです(^^)ソイヤッ (2020年4月28日 2時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
たまご登り - めちゃくちゃ良いですね!!!!コミカルさもありつつちゃんと展開がされているところに作者様の賢さが見受けられました!!とても楽しくキュンキュンしながら拝読しました(^o^)ソイヤッ (2020年4月27日 0時) (レス) id: 080b2c3a82 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - わちこさん» コメントありがとうございます。応援して頂けたてとても嬉しいです(^^) (2020年4月24日 2時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かにかま | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/0660ea0a061/
作成日時:2020年3月22日 17時