検索窓
今日:19 hit、昨日:23 hit、合計:31,633 hit

もしも 中也side ページ8

いつもより早い時間に来て、Aを待っていた。姿が見えると、俺は名前を呼んだ。


「…おい、A、A」

『あれ?こんなところまで来たの?』


覚えた彼女の名前を何回も呼ぶと、嬉しそうに笑って腰を下ろした。俺もその隣まで行き、砂浜に体を半分ほど乗り上げる。

すると、彼女が俺の下半身の部分を撫でた。人間とは違う、鱗のついた魚のような下半身。


「(Aの足は、どうなってんだ…?)」


気になった俺は、彼女の着ている服を少し捲ってみた。


『えっ、あ、中也?どうしたの?』


白い肌の足が2本あって、触ってみるとスベスベだった。靴に覆われていた部分には、5本の指。

…俺とは違う、人間の足。


暫くすると、彼女は抱えて来た分厚い本を膝に乗せ、ページを開いた。


『中也、ここ読める?』


文字がある部分を指して、何か言っている。読んでくれと言っているのかもしれない。


「…人魚の一族は、千年以上の歴史がある」



書いてあることは、俺達人魚の基本的なことばかりだった。

仲間から聞いたことがある内容ばかりなので、別に難しいことは何も書いていない。



『やっぱり読めるんだね、私は分からないや』

「俺が読んでも、手前には伝わっちゃいねェんだろうなァ…」

『また喋った。何て言ってるんだろう…』


Aは何か呟いたあと、膝を抱えて顔をうずめてしまった。

眠いのか…いや、悲しんでンのか…?

取り敢えず、肩を掴んで軽く揺すってみる。すると、少しだけ顔を上げたAは、俺の目を見てまた何か呟く。


『…もし私が人魚だったら、ちゃんとお話できるのかな』


Aが何を言っているのか、俺には全然分からない。

…俺は、こいつの名前を認識できただけで、彼女のことを何でも知っているような気がしていた。だが思えば、Aのことを分かったつもりでいただけで、本当は全然分かりあえてないんじゃないか。

それは何故か。人魚と人間だから。種族が違うから。

普段の生活、言語、食い物、海と陸、文化に体の作りまで…


人間との違いを自覚すればする程、俺はAとの距離が離れていく様な錯覚に囚われた。



「…もし俺が人間だったら、ちゃんと話せるのか…?」


呟いても、首を傾げて悲しく笑うA。


「俺は、手前が好きだぜ。A」


ほら、この言葉も届かねェ。

太宰王子→←文字


おみくじ

おみくじ結果は「末凶」でした!


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (50 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
89人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ヨモギ雲(プロフ) - チョコさん» こんにちは、コメントありがとうございます!4期見ています!出番が少ないながらも、相変わらず中也さんかっこいいですね…!✨ (2023年3月30日 23時) (レス) id: 8cd691db0d (このIDを非表示/違反報告)
チョコ - この話し面白くて見てます!そういえば、文スト4期始まっていますよ!! (2023年3月21日 13時) (レス) @page25 id: d38db6c248 (このIDを非表示/違反報告)
ユエ - こちらこそ返事ありがとうございます。作者様のペースで大丈夫です。今後も期待しています! (2021年6月29日 18時) (レス) id: 007fbd0124 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ雲(プロフ) - ユエさん» コメントありがとうございます!ダラダラ更新で本当に申し訳ないです(汗)頑張ります! 7月からでしたっけ…?一期がまた見られるらしいですね、楽しみです! (2021年6月29日 0時) (レス) id: 4c88579f44 (このIDを非表示/違反報告)
ユエ - いつも楽しませてもらってます。そういえば文ストの再放送がやるみたいですよ。 (2021年6月28日 7時) (レス) id: 007fbd0124 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ヨモギ雲 | 作成日時:2021年1月22日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。