交渉 Noside ページ40
『そんなやり方をするなら、私は治と一緒にいたくない…っ』
Aの言葉は本心だった。
中也に怯える生活を送っているとはいえ、人魚一族を殺すという残酷な決断をするには至らなかった。
太宰は拳を握りしめる彼女を見つめる。薄くではあるが、軽蔑の意が込められた目を向けられる。彼女の美しい瞳がここまで濁るのは初めてかも知れない。
太宰は僅かな愉悦に浸ると口を開く。
「私の作戦に落ち度は無いよ。私の国は山を2つ程超えた先にある。海を司る人魚でも、津波はそこまで辿り着くことはできない。要するに、内陸へ逃げてしまえば追いかけて来られないのさ。
人魚が全滅した後でもここへ戻るのが怖いのなら、私の国にそのまま民を滞在させても構わない。…もちろん君もね」
『国の合併まで考えてるってこと…？』
「そうさ。…言っておくけど、これは私が何年も考えて導き出した作戦なんだ。そのくらい厄介なものなのだよ、人魚との契約というのは…。」
太宰がどれほどの切れ者なのかAは知っている。だが、殺戮なんてやはり納得できなかった。それは本当に最適解なのだろうか…？
『…中也に会って話をしたい。』
「それはならん。」
扉が開く音と共に、Aの父親が部屋へ入ってきた。
「彼は正気ではない。関わるのは危険だから、もう辞めなさい」
『え、どういうこと…？中也と話したの？
………そういえば、中也はどこにいるの？』
「地下牢だ」
Aは息が止まった。地下牢は死刑を待つ囚人が送られる場所である。そんなところへ閉じ込められているのか。
「自白剤でお前をどういって脅したのかも全て聞き出した。…海水に触れさせなければ、力は弱まる。もう津波に怯える必要はない。彼を閉じ込めている間に、私達は太宰王子の作戦を実行しよう」
『なんて酷いことするの!?そんなの絶対駄目！』
珍しく声を荒げる彼女の肩に、太宰は手をおいて制する。
「A、落ち着き給え…っ」
『離して！』
彼女は声を太宰の手を振り切り、部屋を出ていった。きっと、向かうは地下牢。
太宰はそれを分かっていた上で、追いかけなかった。どうせ彼女は何もできないのだから。
「さぁ、お父様。始めましょう。」
「…そうだな」
太宰は、父親の辛そうな表情に気付いていた。
「(…本当に、慈悲深い親子だ)」
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ヨモギ雲(プロフ) - チョコさん» こんにちは、コメントありがとうございます！4期見ています！出番が少ないながらも、相変わらず中也さんかっこいいですね…！✨ (2023年3月30日 23時) (
レス) id: 8cd691db0d (このIDを非表示/違反報告)
チョコ - この話し面白くて見てます！そういえば、文スト4期始まっていますよ！！ (2023年3月21日 13時) (レス) @page25 id: d38db6c248 (このIDを非表示/違反報告)
ユエ - こちらこそ返事ありがとうございます。作者様のペースで大丈夫です。今後も期待しています！ (2021年6月29日 18時) (レス) id: 007fbd0124 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ雲(プロフ) - ユエさん» コメントありがとうございます！ダラダラ更新で本当に申し訳ないです(汗)頑張ります！ 7月からでしたっけ…？一期がまた見られるらしいですね、楽しみです！ (2021年6月29日 0時) (レス) id: 4c88579f44 (このIDを非表示/違反報告)
ユエ - いつも楽しませてもらってます。そういえば文ストの再放送がやるみたいですよ。 (2021年6月28日 7時) (レス) id: 007fbd0124 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨモギ雲 | 作成日時：2021年1月22日 13時
