薬指に契約を【文豪ストレイドッグス】

準備 ページ28

『明日は、いよいよ舞踏会なので、二人に大まかな説明をしておきます』


お父様から渡された資料を持って、二人の前に立つ。



『まず1つ目、中也は舞踏会お留守番ね』

「は!?なんでだよ！」

『やっぱり各国の御偉いさんの集うところで、身元が分からない人を出すのはよくないってことになったの。ごめんね中也』

「ぷぷーっ、残念だったね中也！これで邪魔者はいなくなる！」

『2つ目、舞踏会中は呼び方を“太宰様“に戻す』

「え!?なんで！」

『だって、正式な場で他国の王子を呼び捨てはまずいから…』

「はっ、ざまあねぇな！クソ太宰！」

「君ねぇ、もう少し丁寧な言葉遣いできないの？Aの教育に悪いから喋らないでもらえるかい？」

「あ？手前のその身体中に巻いてる包帯ってやつも教育に悪いぜ！ファッションセンス無ェな！ダッセー！」

「元裸族のくせによく言うね！」

「裸族じゃねェ！人魚だ！」

「人魚だって裸だろ？やーいお魚中也ー！」

『……。』



どうしてこうも話が脱線するんだろう。私もう嫌だよ？間に入って宥めるの。舞踏会は明日なのに、説明に時間をかけるわけにもいかない。

はぁ、とため息を一つはいて、資料を机に置いた。



『えーっと、ここに置いていくから確認しといてね。私は他にもやることあるから行かなきゃ』

「え、ちょっと待ってよA！」

「そうだ！こんな奴と一緒に読んでられっか！」

『一々そうやって喧嘩されちゃうと時間がかかるもの。仲良くする練習もかねて、ね？』



仲良くする練習って何だ。

心の中で呟く。二人のげんなりした顔に苦笑しながら部屋を出た。


さて、衣装の前日着装と、挨拶のリハーサルと、招待国の最終確認もしなくちゃ…あー、頭がパンクしそう。

…きっと、明日の舞踏会は、私の婿探しの意味も込められていると思う。前に招待国のリストを見たとき、婿候補がいる国が揃って参加していた。もちろん、治も。…そろそろ、本格的に選ばなきゃいけないのだろう。

それと気になるのは、中也のこと。中也は私に会うためにわざわざ陸に来たと言った。それは、どういう感情…？

それに、私が結婚したら中也はどうするのだろう？一緒に嫁ぎ先に行くわけにも行かないし…。


様々な問題に、私は頭を悩ませるばかりだった。

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