【銀魂ﾄﾘｯﾌﾟ】恋動の幕末

♯2 ページ23

「ーーきたか、真選組」



怪しげに笑う犯人をよそに
外からはスピーカーを通して気だるい声が
聞こえてきた。安心もつかの間、




『あーあー、犯人に告ぐ。お前たちは既に
我々に包囲されているー。おとなしく武器を
すてて投降しなさい犯人』




こちらまで気が抜けてしまいそうな説得に、
犯人が応じるわけもなく




「ちっ……馬鹿にしてんのか！」



犯人さんがもう一度、私の方に目線を向けた。
ーーどれもこれも、さっきの声主のせいだ




「ちょうどいい。威勢のいい姉ちゃん
……ちょいと来いや」

「えっ！？」



ぐいっと引っ張り上げられ、
犯人の腕の中にすっぽりと収まってしまった。
……途端に首元で刃物がぎらりと光り、ごくり
と唾を飲み込んだ。






「ーーー見えるか腐れポリ公どもぉぉ！！
俺たちの要求を断ってみろ！
この女はこっからどぼんだ！！」

「……っ」



長い階段をのぼり、外へでたと思えば
たっかーい屋上であったわけで。

…実を言うと、高所恐怖症であったり
なかったり。


ーーー恐る恐る下に目線を持って行けば
見覚えのある黒髪のその人…と
メガフォンをもってこちらを見上げる
幼い感じの青年。

その後ろに控えた黒い集団






『犯人〜、女を人質にとるなんざ最低だ
故郷のお袋さんも泣いてるぞ。そんな犯人に
育てた覚えはないってな』

「犯人に育てられた覚えもないわァァ！！」






……ぜっったいこの青年だ。この最悪な状況を
作ったさっきの説得者は。







「ーーーー……っ」




とにかく、そんな恨みは後のこと。
…少し吹いた風でも、こんな高層な場所では
体が揺らぐ。





(…こわっ…)



20歳にもなって涙を流すのはみっともない
なんて思いつつも、こらえきれないそれが
頬を伝う。






「ーーーさあ！真選組ィィ！！市民の命か
テメェらの組織！どちらか選べ！！」



耳元で聞こえる声がこだまする屋上。
あぁもうどうとでもなれと目をつむったとき








「ーーー…っえ」





なんの前触れもなく、…着物に入った刃物によって、前がはだけてしまった。







「おら！どーすんだ！着物剥ぎ取って
落とすぞこの女ァァ！」



1歩、2歩と押し出される体。見下ろす先が
視界の先でぐにゃりと歪んだ。


ーーはだけた肌に、夜風があたる。






「ちょ、たんま！…さすがにや、だ……」




目の前に広がる"死"の予感に、ぶるりと体が
震えたそのとき








「ーーーそこまでだ。大人しくしてもらおう」

♯3→←迷惑千万

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