【銀魂ﾄﾘｯﾌﾟ】恋動の幕末

♯5 ページ16

「ーーー今日は、ありがとうございました」

「おう」




すっかり暗くなった空の下、万事屋の扉の前で
レジ袋を持つ土方さんに礼を述べた





「……私、この世界に来て不安ばかりで。
楽しかったです。本当にありがとうございました」

「何度礼言やァ気が済むんだテメェは」





初対面での印象は"怖い人"だったけれど、
本当はもっと暖かくて___、




「…ただのいい人」


「なんか言ったか」

「いえ、なんでも。…それではまた____、」
「ーーA！！帰ったアルカァァ！？
…って、アレ？」


「ぶほっ」
「か、神楽ちゃん」




大声とともに降ってきた神楽ちゃんによって
蹴飛ばされた扉が土方さんに見事に的中。
彼女は無言で親指を立てる。



「ーーストライクアル」

「何すんだテメェは！！」
「銀ちゃーん、ニコマヨがきてるヨ」


「話聞けよ！」



奥からだるそうな足音が聞こえ、あくびを
堪えながら登場した坂田さんの目が、
土方さんを捉えさらに顰められる。





「…おま、…うちの従業員の帰りがやけに遅いと思ったら。ーー…何？誘拐ですか。
税金使って誘拐ですか」

「テメェ、いつかしょっぴくかんな！」


なぜ、この2人はこんなにも仲が悪いのだろう
苦笑を漏らす。まさに取っ組み合いが始まるかという雰囲気の中、「ご近所迷惑ですよ」
と、顔を覗かせたのは、新八君だった。




「ーー荷物運んでくれたんです」


「え、まじで？………いくら取る気？」
「いらねーよ。ねェだろうが」



何で親切してこんな疲れにゃなんねー、と。
不愉快そうに言葉を吐き捨てた土方さんに
頭を下げておく。




「・・あ、下まで送りますっ」



坂田さんをひと睨み、先に歩きだしたその人を
追いかけて慌てて階段をかけおりたわけだが。









「ーーーわッ」



なれない着物と足のもたつきが災いし、
私の体はあっという間に支えを失い、階段を
転げおちる、ーーはずだった。






「ーーあっぶね、…たく、何してんだ
どんくせェな」



ーーが、…間一髪。土方さんの腕が、
軽々と私を支えてくれたのだ。

香る紫煙が、その事実をより強く認識させる






「…っ、す、すみません」
「慣れてねェなら走るなアホ」

「アホって…」




何か文句あるのか、と睨まれたので
なんでもありませんっ、と敬礼しておいた。


ーー確かに、アホだ。あわてんぼうだ。


あぁ、また迷惑をかけてしまったと、
反省の意をこめて、

立ち去るその後ろ姿に、深々と頭を下げた

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