検索窓
今日:7 hit、昨日:5 hit、合計:93,100 hit

口実 ページ37

お兄さんだった。
会いたいと願ったその瞬間に現れるなんて、どこのおとぎ話だろうか。

私のことを少しでも哀れだと思った魔法使いが
一時願いを叶えてくれたのだろうか。







(・・なぁーんてね)




願いを叶えてもらえるほど、真っ当な人生を
歩んだ覚えはない。



私に制止を促した彼は、静かにベンチまで近寄って
そうして、隣に腰掛けた。

ーーその距離は、あの部屋で会う時より、
少し近くて、・・少し胸がときめいた。








「仕事はどうしたんだ」

「あら、遊女にだって休息は必要だからね。
気分転換に散歩に出てきたってわけさ」


「・・案外自由なんだな」



少し面食らったような表情をしたお兄さんは、
紫煙を一つ吐き出した。私は外では吸わないし、
灰皿もない。手持ち無沙汰を感じながら、
私はクスリと笑った。





「幽閉でもされてると思ったかい?ーーでもまあ、
この自由も店の戦略さ。飴と鞭を使い分けるのは
大事なことだろう?遊女の行動は比較的自由。
営業妨害しない限り、お咎めも無し。

・・まあ道理にあってるから、私は今のシステムに
何の文句もないけどね」




なるほどな、と。納得してくれたようだった。
私はあまり考えたこともなかったが、
他の遊女に関しては、比較的有意義に過ごしている 人もいるかもしれない。

・・あそこに勤める他の遊女に会って話したこと
なんて、いまだにないんだけど。






「ところで、お兄さんの方は?」

「俺ァ今日は休暇だ」


「・・そうかい」




確か、悪い情報屋って設定だけど、
実際はどんな仕事をしているんだろう。


一生知ることなんてないだろうに、
彼のことは何でも、知りたくて仕方なかった。









(ーーーやっぱり、好きだ)




ごまかせない。会うたびに大きく膨らむ感情は、
もはや抑えようがないのだ。

だから、最低だとわかっていて、
彼にキスをしたのだし。触れたいと思う。


我慢強いはずの私が、会ってはダメだとわかっていても、会いたいと願わずにはいられない。

ーーこの時間が、続くことを願わずにはいられない






「・・ねえお兄さん、」

「なんだ」


「まだ、酒が残ってるんだ」




半分以上残ったお酒。お兄さんのために用意した
ものを、他の男に飲ませる気にはなれなかった。







「ーーー取引、しないかい」




この人に会うための口実として、
まだ、使えるだろうか。

取引→←真冬のベンチ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (103 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
170人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 土方十四郎   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

シュシュ☆☆(プロフ) - ややさん» ありがとうございます!嬉しいですっ!!読んでくださり、感激でいっぱいでございます!がんばります! (2018年2月1日 20時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
やや(プロフ) - 凄くいい話ですね尊敬しましたこれからも更新頑張って下さいね!!! (2018年2月1日 19時) (レス) id: 551e634984 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございます!土方さんは、実は優しいんじゃないかな?というのが私の妄想です笑。きっとピンチに助けに来てくれるはずです!あと少し、お付き合いいただけると嬉しいです! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 愛音さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!ちょっと土方さんがヘタレになってしまいましたが…最後はきっとビシッと決めてくれるはず…です!頑張ります! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 紫蘭さん» ありがとうございます!何とか一巻完結ということで、どうなるのやら私もわかりませんが、頑張って収めたいと思います!どうぞ楽しんでいただけると光栄です! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:シュシュ☆☆ | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月4日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。