【銀魂】闇に酔う悪魔

今と昔 ページ26

ー土方サイドー






「で？例のイイ女に貢いでんですか」

「貢いでねーよ！」





なおも言葉を続ける総悟。完全に大友の本題から
話が逸れているが、とにかくこの場を収めるのが
先決だろう。

本来ならばくつろぐべき場所の自室で、
ここまで警戒心を発揮するなど
誰が想像しただろうか。



(・・何としてでもここで食い止める)



漏洩させるわけにはいかない。






「・・別に私情で通ってるわけじゃねーよ。
何せあそこの遊女は、裏の人間の中で客とってんだ
ホシの情報だって転がり込んでくるかもしれねェ」


「そういう建前ですか」
「いやお前どんだけ疑ってんだよ」





どうにもこうにも、一筋縄ではいかねェらしい。
面倒極まりない。加えてこいつも、腹黒モードに
突入しているらしい。






「ま、あんたがどんな理由づけして遊女弄り倒してんのかは知りやせんが、・・あんまり深入りすると
面倒なことになりますぜ」


「面倒なことだァ？」

「俺たちゃ表。遊女は裏。それは変わらねェ。
例えそいつが犯罪おかしてなくともその世界にいれば同族だ。あんたもそれくらいわかってんでしょ。
どうにもならねェんでさァ」



「・・何が言いてェ」




テメェにバレた時点でとっくに面倒なことに
なっちまってるわけだが。

総悟の言葉は、どこか含みをもっていて、
ぞくりと俺の背筋を撫でるようだった。







「ーーーいい加減な感情で惑わすのはやめろって
ことでさァ。・・中途半端が一番残酷だ」






中途半端。そんな言葉に心臓が跳ねた。
その、いい加減な感情の正体すら見えねェってのに
図星をつかれたような感覚に陥った。



このガキには一体何が見えているのだろうか。
俺が知り得ない俺を知っているのだろうか。


無反応なこっちに向かい、総悟は大げさに
ため息をついた。







「今も昔も成長なしたァ驚いた。大人でも向上心は
大事なんですぜ？」







こいつは、言葉足らずだ。
ただ意味深くセリフを吐くが、核心はつかない。
悪趣味極まりない。







「はっきりしなせェよ。ーーー悩むってことは、
"前"とは違うんだ」






前が何を示しているか。
それは何となくわかっているようで、わかってない





だが、・・あぁそうか。以前は迷ってなかった。

ーーあの、今にも消えそうな小さく細い背中が咳で
揺れている後ろすら躊躇いなく素通りした俺は、大事なあの女を突き放すことを、迷ってはいなかった

迷っている→←一理ある

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す