【銀魂】闇に酔う悪魔

慢心は怪我の元 ページ21

ー土方サイドー







(ーー結局、)



うまく総悟の野郎に乗せられた。
俺は再び、この部屋の前にに立っている。


無口な店番が消えたところで、
そっと襖を開けた。







「・・あんたかい」

「よお、ーーー雨だな」



「・・・そうだね」





いつも暗い部屋の中だが、
より一層黒く塗りつぶされていた。

小さな窓は、いつも通りカーテンで遮られ、
雨音を聞くにとどまっていた。






「本当に物好きなお兄さんだ。こんなところに
またのこのこやってきて。・・雨の日なんざ特に
物騒なんだよ」

「そのようだな。つい先刻絡まれた」

「・・、そりゃ、大丈夫だったのかい？」

「どうってことねーよ」





数人に囲まれ、どっかに担ぎ込まれそうに
なったところを、伸ばしてやった。

こんな場所で生きてるという割には、
随分あっけない奴らだったな、とテキトーな感想を
抱きつつ。







「どうした」

「・・いいえ。お兄さんは強いのね」



そいつの様子が、以前と違っていた。
寂しげに落とされる声は、からっぽだ。

いつも含みをもたせた言い回しをするくせに、
今日ばかりは、何もねェ。


ただ上の空に、俺の話に頷いているだけのようで。






「何かあったのか」

「ふふ、・・・どうだろうね」




綺麗な笑みを貼り付けるのは得意でも、
本音を誤魔化すのは苦手なんだろうか。

こちらから視線を逸らし、煙をふかすAは
一瞬悲しげに眉を寄せた。






「今日は、どうしたんだい」




気を取り直すように問いかけられたそれに、
俺はおし黙る。・・なんたって、理由などないのだ

それを知ってか知らずか、そいつはクスリと
笑いをこぼした。




「・・・気をつけろって言ったそばからこれだ。
全く困ったもんだよ、用もないのに危険地帯に
足を踏み入れる物好きさんは」

「手前ェの身くらい手前ェで守るさ」

「慢心は怪我の元ってね」


「そりゃあ、違ェねーがな」




そこまでで、一旦会話が途切れた。
何をするでもなく、ただ時が刻まれるのを
感じながら。


時折混ざる二人ぶんの紫煙が、
目の前を白く染めるだけ。




以前のように近くに寄ることも、
また向こうが寄ってくることもなく。








「ーーーねぇ、お兄さん」



次に喋り出したのは、Aの方だった。

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