どうですか俺と【川西太一】 (ページ39)

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誰もいない、2人きりの教室。

｢え。…マジで着るんですか｣

｢うん。着てみたい｣

｢まあ今日はあんまり着てないけど…｣

その中でしたかった事の最後の1つをする。

これだけは少女漫画や恋愛ドラマで見ていて、

高校生のうちに1度はしてみたかった。

したかった事、その③

『太一のジャージ(上着)が着てみたい』

｢わ、でかい…袖余る！｣

｢Aさん、ちっちゃいから｣

実際に着てみると、

思っていた以上にジャージはおっきかった。

いつも太一が着ていると丁度いいのに……！

そうか。これが体格差なのか。

そう思うと胸がきゅうっとなった。

｢んん〜〜いい匂いする〜｣

｢変態。脱がせますよ｣

｢もう、言い方…！｣

そう笑いながら袖口を顔に当てて顔を隠す。

こうして制服姿でやり取り出来るのも最後。

明日が来たら、もう太一とも頻繁には会えなくなるんだ。

｢……太一｣

｢ん？｣

イスに座った太一にゆっくりと近付く。

不思議そうに私を見上げる太一の両頬にそっと手を添えた。

｢大好きだよ｣

その目を真っ直ぐに見ながら想いを伝えると、

少しだけ目を見開いては、うん、と優しく微笑んだ。

｢一日最低でも１回は太一のこと妄想するから｣

｢はは。それは怖い｣

私の腰に緩く腕を回しながら太一が笑う。

｢いっそのこと留年しちゃえばよかったのに｣

｢……あんたねぇ｣

頭突きでもしてやろうか、と頭を当てに行くとすんなり避けられた。

｢そういう人ほど留年するんだからね？｣

｢がんばりまーす｣

｢……先輩は不安ですよ太一くん｣

お互いに冗談を言ってじっと見つめていると、

太一が私の胸元に顔をうずめてきた。

おおう。心臓やっばいぞ。

｢？……あれ？｣

｢なに？｣

｢Aさんに胸がある｣

｢……………｣

真剣な顔で言う太一の頭にドスッと鉄槌を下した。