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白鳥沢学園の校内はかなり広い。本当に広い。






そのため、部活や昼食の時など以外で、

他学年の生徒の子たちに会うことは滅多にない。









「わぁあ!たいちーーっ!!」


「どーも」








だから1日のうちで大好きな太一に会えたときの感動は尋常ではない。









「やった、太一に会えた」


「そうっすね」


「うへへ、嬉しいなぁ」








しかも今の太一は次の授業が体育らしく、体育着にジャージ姿。







まさに目の保養!!!

もう、次の授業が移動教室でよかった!




移動教室バンザイっ!

ありがとう神様、ありがとう学校!!






この太一の姿はきちんと脳に記憶させていただき……








「あの、Aさん」


「はいっ!?」








名前を呼ばれ、一気に現実へと引き戻された。









「何でしょうか太一さん!」


「ちょっと、じっとしてて下さい」









表情ひとつ変えずにそう答えると、


私の身長に合わせて太一が背中を屈めてきた。





目と鼻の先には、太一の顔。









「えっ、た、たた、太一!?」


「はい」


「おお、お顔が近いです!」


「そうっすね」









本日2回目の「そうっすね」をいただき、


身動きもとれずにそのまま固まっていると


太一がゆっくりと顔を近づけてきた。









わっ、な、なに、チュー!?チューかっ!?









「……………」









反射的にぎゅっと目を瞑ると、

腕に抱えていたノートや教科書にも力が入った。









ええい!こうなったら全力で受け止めるしかないわ!

さあおいでっ!どんとこい太一!!!



※2人は付き合っていません。








なんて興奮しながら私はその瞬間を待った。









「…なんてね」


「へ?……うがっ」









けど、その瞬間はくるはずもなく。


目を開けると同時に片手で鼻をつままれた。








「残念でした〜」


「……へ?」







そう言って、べっと舌を出した太一はとても愉しそうに笑っていた。









「Aさん意外とおバカさんですよね」









その清々しい笑顔をみた瞬間、

ああ、からかわれたんだ、と気付いた。









(太一のバカ野郎!いじわるだっ!)


(はは、おもしれぇー)


(面白くないわ!この…ときめき泥棒!!!)

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作者名:nome. | 作成日時:2017年2月12日 0時

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