その狼に触れてはならない ページ32
ロボ「グルルルル……」
鋭い眼光に怖じ気づきそうになりながらも、候補生は歩みを止めない。
その意図に気付いたのか、ロボは少し体勢を低くし、候補生の腕を噛み千切ろうと飛びかかる。
立香「止まって、ロボ!!!」
ロボ「!」
あと少し遅ければ右腕をもがれていたという所で、立香のロボを呼び止める声が響いた。
咄嗟に踏み止まったロボの視線の先には、候補生を庇うように立ちながら息を整えるマスターの姿。
立香「ハァ、ハァ……。
ま、間に合った……良かった…」
ロボ「……ウゥゥ…」
立香「ロボ、この人は駄目。
近付きすぎた事については、後で俺からも言っておくから。」
「っ、おい!何勝手な事を__」
立香「駄目だ。お願いだから、今だけは何もせずにじっとしてて。
これ以上近付いたら、君もどうなるか分からない。」
いくら立香でも、人一倍人間に憎悪を向けているロボを宥めるのには限界がある。
勿論立香の目の前で殺すつもりは無いが、あまりにも酷いようなら手足の一本や二本くらいなら良いだろう、という認識を彼等はしているのだ。
今も、『立香がいるから』という理由で何とか大人しくなりつつあるロボだが、それに気付かない候補生は立香を押し退けてしまう。
「うるさい!僕より下の一般人が、僕に指図するな!」
立香「わっ!」
刹那、ロボは限界だと言わんばかりに殺気を放つ。
今からでは令呪を使っても間に合わないと判断し、立香は咄嗟に候補生の腕を強く引っ張って後ろに隠して痛みに備えて目を瞑った。
ザシュッ!
嫌な音が聞こえた。
けれど、立香に痛みはなかった。
驚いて目を開けると、目の前には薄く紫がかった白い髪が視界いっぱいに映る。
一瞬どちらなのか迷ったが、髪を束ねている黒いリボンが見えると立香はすぐに目の前の人物を特定した。
立香「……!!」
オベロン「……いけないよ、それはいけない。」
静かに、ハッキリと。
突如現れたオベロンはロボの鋭い牙に腕を貫かれながらも、顔色一つ変えずに真っ直ぐにロボを見つめていた。
ロボ「グルルル……」
オベロン「……うん、分かっている。
君の怒りも最もだ。けれど、今ここで彼を消してしまうのは良くない。
それではマスターが困ってしまうからね。」
すると、ロボはゆっくりと口を開け、オベロンの腕を解放する。
そして顔を青くしている候補生を一睨みすると、霊体化をして姿を消した。
今までずっと事の成り行きを見守っていたヘシアンも、彼の後を追うように消えていった。
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こし餡の信者 - わんさん» 勿論ありますよ! (2020年4月21日 15時) (レス) id: bfa5138b88 (このIDを非表示/違反報告)
わん - これは参がある感じですか? (2020年4月21日 2時) (レス) id: 8dc334f6e1 (このIDを非表示/違反報告)
こし餡の信者 - レインさん» 返信が遅くなり大変申し訳ありません!一気読みしていただけて嬉しいです^^ 中々更新が出来ずにいますが、完結はさせるのでお待ちいただければ幸いです! (2020年4月9日 23時) (レス) id: bfa5138b88 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 最近一気読みしたものです。コロナウイルスなどで大変だとは思いますが、更新頑張って下さい!応援しています! (2020年4月2日 22時) (レス) id: d7281daec0 (このIDを非表示/違反報告)
こし餡の信者 - レイさん» ありがとうございます!そう言っていただけると作者冥利に尽きます!更新もボチボチ頑張らせていただきますね! (2019年12月4日 23時) (レス) id: bfa5138b88 (このIDを非表示/違反報告)
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