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何分間そうしていただろう。
たまに口から出してみるも、なんだか寂しくなってまた噛み始める。
同じところばかりストーブに当たり、そこだけが熱せられて気分がおかしくなりそうだ。
外出の格好のままなのもいただけない。
そろそろどうにかしなくては。
そんな時である。
ドアの解錠音がし、それから靴を脱ぐための擦れる音。
この部屋までやってくるための足音もなんだか彼らしくて好きだ。
「ただいま。……って、何しとんねん。」
やはり、彼から見ても今の私は変なのだろう。
自分で言うのもなんだが、今の表情は限りなく「無」に近いと思う。
そして、「無」のままプラスチック容器を噛み続ける。
「アイスのゴミやん。A噛みグセなんか無かったやろ。なにやってん」
ええからそれは捨てろ、なんて口から引っ張られれば途端に寂しくなる口元。
不満げに彼を見上げれば、やはり何か言えということなのだろう、あちらも不満そうに私を見てくる。
「口が、さみしい」
「やったらプラやなくて俺にすればええんと違う?」
彼は、なんだろう。私の安定剤なのかな。
近づいてくる顔は慣れたもので、緊張こそしなくなったが、その感覚には安心がやってくる。
きっと、私は彼がいなくては生きていけない身体になってしまった。
彼からのキスも、触れられる手も、密着する体も。
全部全部、貴方だけを感じていたい。
「私、治がいないとダメみたい」
「そんなん今更やろ」
彼という名の麻薬に溺れていくのは、存外嫌な気分ではなかった。
○Fin○
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作者名:あをいけ | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/awoike_3th
作成日時:2018年4月9日 20時