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「私、そんなに走れない・・・っ」
ヒールを履いた運動不足の足が
限界だと悲鳴をあげたとき
ようやく一ノ瀬くんは振り返ってくれた。
「ごめんAさん。
・・・大丈夫?」
立ち止まって心配そうに私の顔を覗く。
「だ、大丈夫、だけど・・・」
いっつもヘラヘラ笑ってるくせに。
・・・私が手を繋がなかったから怒った?
・・・まさか、そんなわけない。
___でも、
久々に走ったせいか私の心拍は上がりっぱなしで。
一ノ瀬君の顔を見ると、それがもっと早まるような気がして。
「前の方座ろーよ」
「え、」
当たり前だけど、会場にはもうたくさんの人が集まっていた。
「ほら、あそこ」
一ノ瀬君が指す方を見ると、
前から三列目にちょうど席が2つ空いている。
「・・・濡れる、よね?」
失礼だけど、
水槽の水ってあんまり綺麗そうじゃないし。
「確かに、Aさんの服が汚れちゃうのは嫌だなー」
キツいスカートを脱いで、
結局この間買った黄色いワンピを着た。
春樹に「今度着てきて」って言われたけど
まだ着てなかったヤツ。
「この服は別いいけどさ」
「そんなこと言わないでよ、
せっかく似合ってるんだから」
「そーゆーのいいから」
さっき着てたスカートにも同じようなこと言ってたくせに。
「・・・良いよ、前行こう」
「え?」
「せっかく連れてきてもらったんだし、近くで見たい。」
私がそう言えば、彼は目を輝かせて。
「いいの!?」
「・・・早くしないと、席とられるよ」
「行こ!!」
「あ、ちょっと、」
またもや掴まれた腕だけど、
振りほどくのはなんか違う気がするから。
腕をひかれるまま席に向かう。
「Aさん」
席着くなり、
あらたまった顔をしてこちらを見つめる。
「・・・なに?」
その視線がなんかむず痒くて、
思わず目をそらす。
「こっち見て、」
「__っ、」
バックを掴んでいた手に、
一ノ瀬君の手が重なる。
「こっち見て」なんて言われたって
これじゃあますます見れないじゃないか。
「さっきはごめんね」
「っ・・・なにが?」
「手、引っ張ったり急に走ったりして。」
「それはさっき謝ってくれたし。
ビックリしたけど、大丈夫だから」
「・・・・・・。」
黙ってしまった彼に、
同意を求めるように笑いかける。
「Aさん
_____俺、本気になっちゃった。」
「え、」
・
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Julia(プロフ) - イチゴさん» レス遅くなってごめんなさい!とっても嬉しいお言葉、本当に感激しています><これからもどうぞよろしくお願いいたします・・・! (2018年1月7日 0時) (レス) id: 5d9e2ea9d3 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴ(プロフ) - なんか言葉だけじゃ表せないぐらい面白かったです!なんか意味不明ですかね?(-ω-;) あと焦らずゆっくり更新頑張ってください!(*´▽`*) (2018年1月3日 2時) (レス) id: 5cdffbbcc0 (このIDを非表示/違反報告)
Julia(プロフ) - 翡翠葛@優杏さん» コメントありがとうございます!一ノ瀬君の可愛さがより伝わるよう、これからも頑張ります!!これからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)> (2018年1月2日 15時) (レス) id: 32a8b9c6f7 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠葛@優杏(プロフ) - 一ノ瀬くん可愛すぎやしませんか…?一ノ瀬くん可愛いし文の書き方好きだし…むっちゃおもしろいです! (2018年1月1日 23時) (レス) id: 3eab18cbf5 (このIDを非表示/違反報告)
Julia(プロフ) - リンクさん» レス遅くなってしまってゴメンナサイ!とっても嬉しいです、ありがとうございます(/ω\)更新頑張りますのでどうぞこれからもよろしくお願いします! (2017年11月22日 1時) (レス) id: 5d9e2ea9d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Julia | 作成日時:2017年4月22日 12時