【短編 声劇台本】悪魔と人間の恋【百合】

私はイ―ディス。正真正銘の悪魔なの。主となる人間を探してそいつの前に現れる。私の姿は主にしか見えない。つまり、主を独り占めできるってわけ。私の主？いるわ。優奈（ゆうな）っていうのよ。

「イ―ディス、また連れて来た」
「また？ほんと困るのだけど」

実は優奈と私は恋人同士。優奈が連れてきたのは綺麗な女の人間。私、優奈に魔法をかけたの。どんな魔法か。それはね、その者を見た女すべてが魅了され堕ちるというもの。つまり、優奈を見た女がすべて優奈に魅了され堕ちるということ。女だらけのハーレムというわけね。

「仕方ないじゃないの。あなたがこうさせたのだから。」
「私は優奈の願いを叶えただけよ」

まったく…私の気持ちも考えてほしいものだわ。優奈が女を連れて来るたび、いえ、外へ出るたびに私があなたに嫉妬しているのよ。だってあなたは私のものでしょう？一々、散歩する必要は無いのに。というか、私の傍を離れること自体に問題があるのよ。

「優奈、私の気持ち考えてくれているの？」
「え？もちろんだよ」
「じゃあ、答えて」
「ヤキモチを妬いている」
「ふん、分かっているじゃないの。ならやることがあるでしょう？」
「分かんない」

何を言っているのか、この子は。あれに決まっているでしょうよ。

「わざと？」
「ん？何のことか分からないな〜」

絶対わざとでしょう…。

「おねだりしたら、してくれそうね」
「ふふ、さすが〜」
「優奈、私にキスをしてちょうだい」

優奈におねだり。初めてではないけれど、やっぱり恥ずかしい。

「いいよ、キスしてあげる。こっち来て」

優奈の傍に行くと、抱きしめられたわ。
私を焦らしているのね…

「早くしなさいよ。我慢できないの」
「ふふ、我慢できないなんて悪い子だね、イ―ディス」
「悪い子でいいから早くキス」
「はいはい」

優奈がやっとキスをしてくれた。
本当にこの子は意地悪ね。

「愛しているよ、イ―ディス」
「私もよ、優奈。愛しているわ」
「ずっと私の傍にいてね」
「もちろんよ。あなたは私だけのもの。他の悪魔には渡さないわ」
「ふふ」

可愛くて優しい優奈。そんなところに惹かれたのだけど、意地悪な優奈にも惹かれたのよ。悪魔である私に意地悪をするなんて、なかなかの度胸がないと出来ないことだもの。優奈は私のもの。他の悪魔になんか渡さない。私が優奈を、他の悪魔から守るのよ。ずっと私の主であり、愛おしい恋人なんだから。