愛しい君へ

今日ひとりで外を走っていて、風がとても気持ちよかった

休憩をしようといつものところで座って

ぼーっと景色を眺めていて

ふと、隣にお前がいないのに気づいて目を伏せた


お前はどうしてここにいないんだ

俺がここにいるならお前もここにいるべきなのに

お前はいない

俺の足に擦り寄りながら、一緒に景色を見ていたお前がいない

たまに横に上がって隣に座って、鼻で髪を掻き分けて耳を舐めてきたお前がいない

抱きしめるとけもの臭くて、少しちくちくとする毛のお前がいない

不意に真っ黒のまるい目で見つめてきて、何か言いたげに俺を見てたのに

お前がいない今は、俺は見つめ返せない

何でいない

いたのに

いたのに。たしかに

お前がいないから

俺は本当に独りだ

前までは、ずっとそばにいたじゃないか

何でいない

俺がここにいるのに、お前はどうしていない

こうして思い出すことも

いつしか回数が減って

思い出は風化して

忘れて

お前は俺の心の中からもいなくなるのか

今ならその温度も感触もにおいも思い出せるけど

そのうちわからなくなっていって、消えて

お前の隣じゃないとこで泣いて

お前の隣じゃないとこで景色を眺めて


お前のいた狭いケージの隣でアイスを食べても、お前はいない

お前の相棒はいつも出かけてるから、いつもそこは空っぽだ

どうして、俺がここにいるのに

お前はここにいるべきなのに、いなきゃいけないのに

いない

ずっといない

待っても帰ってこないって知ってる

だから待たない

けど、俺が待たなくたって、お前はいつも俺を待ってくれていただろ。

俺がろくに相手してなくたって、俺が身勝手に助けを求めたら

お前は俺のこと見てくれたじゃないか

今泣いてるんだ

何で俺を慰めてくれないんだ

そばにいてよ、とても寂しいんだよ

誰もわかってくれないことを、お前だけがわかってくれてるような気がしてたんだ

誰かとできないことが、お前相手ならすぐにできたんだ

心からすきだった。

とても、大切にしていたなんて言えないけれど

一途に思い慕っていたなんてことはないけれど

たしかに大切に思って、慕っていたよ

お前はそんな中途半端な俺のことを大事にしてくれた

俺が正しくなくてもお前は優しかった

もっと生きていてほしかった

俺が自立するまで一緒にいてほしかった、ずっと一緒にいてほしかった

お前がいないから、俺は変わってしまった

すごく大切な枷だったのに

やさしさを取り戻すための薬だったのに

とても、今苦しい

毎日楽しくない

この先何をしたらいいのかわからない

大切な人と上手くいかない

つまらない、どうして俺はこんな風に

そう思っても、待ってくれるお前がいたから、俺は今まで、ひとりじゃなかったのに

寂しい、寂しい、寂しい

そう繰り返す俺が寂しい

人を信じられない俺が寂しい

ぎこちない雰囲気が嫌になる

そう話せないことが悲しい

悲しい


ねぇ、縋ってるのはわかってるんだ

それでもお前がいないと駄目なんだ

生まれ変わったら絶対に、今度俺が出会うどこかの生き物になって

また俺のそばにいてくれよ

それまでなら俺は待ってる

今度は俺が、お前の帰ってくる場所をあげるから