靴の中コロネ

目が覚めたら靴の中にチョココロネが
あった。

俺もよくわからないが、「朝早く出勤
なので置いときます。母より」という
置き手紙が添えてあった。
もっと場所があったんじゃないかと俺も
思った。

2年も耐えたA○Cマートの革靴は
ボロボロになってしまったので新しく
革靴を買った。最後の1年くらいはと
いいやつを自分のお小遣いで誂えた。
それを最初に履くのがまさか
チョココロネになるとは。

しかし腹が減っては学校に行く元気も
出ないので仕方なく、でも有難く食べる
ことにした。チョココロネの太い方に
ついたフィルターを剥がすと、茶色い
文字で『おめでとう！』とだけ書いて
あった。随分と珍しいなとか、
そんなことだけ考えながら美味しく
頂いた。


俺は制服に着替えて外に出た。
最寄りの駅までは大体20分くらいで着く
…と不動屋さんは言っているそうだが、
多分嘘だと思う。

というのも、道中には信号が２つあって
どちらも青で通れるということは激レア
ケースなのだ。今日はそのケース、本当に
20分くらいで着いた。疑っていた
不動屋さんに謝りたい。

しかも今日は改札を通れば
ナイスタイミングで急行電車が来た。
幸せの青信号だったのかもしれない。

やっぱり急行電車の需要は凄くて、
あまりの人で窓際の人たちはタニシ
みたいになっている。俺はというと、
人の出入りの度に色んなところに
追い込まれていった。

気づけば俺は三号車の端に来ていた。
大体の号車は端の4席は優先車席なので
俺みたいな健全な男子高校生は座っちゃ
いけない。しかし3号車だけは別、通常席
…なのだがそれ故に空くことはない。

しかし今日は1席空いていた。
俺は座りながら「今日はなんて日だ。」
とひとり呟いた。


学校の最寄り駅の東口を出たら、
ほぼ同じタイミングで金髪の可愛らしい
ギャル─下尾雪がコンビニから来た。
しかもあろうことか「はよーっす！」と
彼女らしい挨拶をしてきた。

というのも、俺は彼女に惚れている。
一目惚れというしょうもないきっかけ
だが、2年経った今でもその時の熱は
冷めないままだ。

「セーンパイッ！」と出し抜けに彼女は
俺に話しかけてきた。
「ヒャイ！」と腑抜けた声を出して
しまった俺が情け無い。
だがいつのまにか一緒に登校していて
緊迫している俺には同情する、自分だが。

「今日コンビニでタピオカ2つ買ったら
合計がホラ！」と出てきたレシート。
そこには合計が777円と書いてあった。
大当たりのスロットの表現以外でこの
見事な数字の並びは見たことがない。

「凄いじゃん！」

「でしょでしょ奇跡っしょ！」

そう言って下尾は俺に未開封の
タピオカをくれた。

「コレお前が飲む用じゃなかったの
かよ。」

「いいっしょ、トリプルセブン初遭遇
記念！」と彼女はバコンとフィルターに
デカい穴を開けて黒い玉を吸い上げた。
俺もそれを見て同じことをした。

登校中だが、今だけはデートと錯覚
させてくれ、神様。