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逃亡か襲撃か - 2024年5月6日

【Escape】四つ辻の美少年范無咎から逃げましょう。
*

好きな人がいる。人…なのかどうかは定かじゃないけど。

そして今、私はその好きな人に狙われている。


「ちょこまか逃げるな、さっさとくたばれ…！」

『やーだよ、まだ逃げるからね！』


黒い影が脇を掠めていく。

そう、彼…范無咎こそが私の好きな人。

口調の荒い彼の何処を好きになったか、だなんて私だってわからない。

気付けば好きになっていた。それが1番近い。


『あっはは、遅いよ范無咎！』

「チッ……」


くるりと振り向き、挑発するように板前に立つ。

チェイスの術は范無咎、あんたと長く一緒に居る為に身につけたんだよ。

……なんて、言おうものなら気持ち悪いって一蹴されるんだろうけど。


『というか、なんで私ばっか狙うワケ？さっきミスってヘレナの横通り過ぎたのに。』

「見えてなかった。」

『嘘だ。だってその時ヘレナ重叩きしてたとこだったもん。』

「心眼よりお前の方が厄介だから優先したまでだ。」

『その厄介者のせいでまだ1人しか飛ばせてないんでしょ…って危な！』


眼前に向かってくる切っ先。

謝必安だったら当たってたな、危ない危ない。


「……好きな奴の好きな奴の話なんざ、誰が大人しく聞いてると思うんだ……。」

『なんか言ったー？』

「いいや、何も。それより良いのか？」


背後に気を配らなくて。

振り向いた時にはもう遅い。

傘の切っ先が私の肩に命中し、強かに身体を床に打ち付ける。

しまった、負傷状態でのチェイスで油断なんてするんじゃなかった。


「全く、手間を取らせる……。」

『チェイスが上手くなったって言ってよ。』

「あーそうだな上手くなったな。」

『雑！』


椅子に縛られ、珍しくキャンプをする范無咎に視線を向ける。

確か、100秒は牽制出来ていた筈。

もっと長くチェイス出来るようになりたいけどなぁ……。

范無咎と居られる手段がこうした命懸けの場面しか無いんだから、頑張らないと。


「YOU。」

『何？』

「その恋は諦めろ。」

『は？どういうこと、って、きゃあああ！』


飛ぶ瞬間、范無咎が僅かに苦々しい顔をしていたのは気の所為だろうか。

*

「貴方も素直じゃないですね……。」

「素直に言えるのなら苦労はしてない。」

「そう、ですか……。実るといいですね、范無咎。」

「……。」


［その恋は絶対に実らせない］

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