愛神報告書

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:1,326 hit

この報告書は巫女見習いに配布されるものである。

①愛神とは
豊作や国の防衛などを1000年前から担う神々の総称。
祭りも供物も要求しない代わりに、愛を求めることから愛神と呼ばれている。総じて執着心が強い。

②巫女の役割
愛神に愛を提供する役割を担う者。
友愛、セイ愛、家族愛、など愛神ごとに好む愛の種類も違うため、巫女は複数人存在する。

③巫女の禁則事項
・愛神に望まぬ愛を提供、強要
・愛神の拒絶
・役割の放棄
830年前の火山の大噴火や、480年前の大津波、147前の大飢饉、そして５年前の豪雨は当時の巫女が禁忌行為を行ったために起きた愛神による神罰である。

④今年の巫女枠
3人

次のページから愛神の報告書となる。見習いは、筆記テストまでに全てのページに目を通しておくこと。
最終的には、ある程度の愛神の知識を頭に入れておくこと。

【......このページの下の方に短い走り書きがある。インクは乾き切っており、おそらく前々から書かれていたものだと思われる】

6種類の結果パターン

たまたまこの文をみた見習いさんどうか巫女にはならないで - 2024年5月11日

冥界神テラ
この国の死後を司るとされる女神。
太陽神ザンダクと地母神マヤの子。この2柱の子は、現在国を統べる神々の父母であり、テラは主神アルバの妹、神々の末っ子にあたる。

【冥送り】
地母神マヤの力を特に強く受け継いでいたため、春を司る予定であったが、冷酷で冷たい振る舞いから花々や木々から嫌われてしまっていた。テラはなんとか植物たちと和解しようと努力したものの、彼らはその努力に応えることはなかった。
ある日、彼女の前にとある罪人の魂が現れる。
聞けばその罪人は、盗みも殺しも働いた屑であったと知り、テラは冷たくあしらったが、その魂は死んでもなお金銭を盗もうとしたため、テラはその魂を冷たい冷たい氷に閉じ込めた。
それからしばらくしたのち、彼女の元に罪人とよく似た魂が現れた。罪人と違う点は、罪を一切犯していないことである。
そしてテラはこの魂が罪人の子のものであること、罪人が罪を働いたのは病に倒れたこの子のためであることを悟った。
彼女は２つの魂を雲のような優しい雪で包み直すと、冥界へ流れる川へと流した。
これがきっかけで彼女は冥界を司る女神となったという。

【性質】
冷酷で残忍、とされているが単に神馴れ人馴れしていないだけである。優しく他人を思いやる面が本質である。

【外見】
黒いベール、黒いスーツドレス。冷ややかに冷たい深緑の瞳と銀色の長い髪を持つ成人女性のすがたをしている。

【眷属】
金魚

YOUは困り果てていた。
隣の美しい女性と困り果てていた。
目の前には、女性から顔を背ける花々。

『......やはり私は嫌われているのね』

はぁ、と吐いたため息は冷気を纏いYOUを震わせる。

『花壇から動けないくせに。引き抜いてあげましょうか？それとも手折ってあげましょうか』

彼女のその言葉に花壇に花々が震えだす。不毛の争いしか続かないので、いったん彼女と別の場所に移ることにした。

中庭の端にある横長椅子に彼女は座ると再びため息をついた。

『兄さんたちのようにはなるまいと思って真面目にやってきただけなのに何がいけないのかしら......』

少しだけ疲れたように笑う彼女の手を取ると、驚いたように目を見開いた。

『そう、そうなのね。でもそういうの分からないの。愛されるってどういうことなのか分からないの......ごめんなさいそろそろ戻らないと』

YOUの手からするりと彼女の手が抜けていく。

『いつかあなたが愛を......教えてくれたら嬉しいわ......』