TVXQ　奏心な愛　1　～ユチョン～

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Aさんの診断結果

第12話：あっ、この前の！
今夜はオーナーに頼まれ遅くまで残業をしていた。
「もうこんな時間か…。オーナー遅いな…。」
ふと時計に目をやると10時を少し過ぎていた。

薄暗く静まり返った店内はとてもさみしい。そんな雰囲気にのまれ、私は思い出してしまう…。

忘れたくても忘れられない人…。

私はピアノの前に座り、定期券入れから航空券を取り出した。
とっくに期限が切れた、使えない航空券…。
「…シュン。」
決して返事など返ってこない名前をつぶやいた瞬間、虚しさが心をえぐり、穴をあける。
胸に航空券を当てその穴を埋めようとするが、涙だけが溢れ出てくる。
心にぽっかりと空いた穴…あれからもう何年経っただろう…。

そして私は彼の好きだった曲を弾きはじめた。
楽譜なんて見なくても指が自然に覚えている。
忘れたくても忘れられない曲…。

感傷に浸っていると、店のドアが開きオーナーが戻って来た。

「今、戻ったよ。Aさん、こんな遅くまで残ってもらってすまんね。」
突然だったので私は驚き、急いで涙を拭いた。
…泣いていたの、見られちゃったかな？

「おかえりなさい。お疲れ様でした。」
オーナーを見ると、横にもう一人男性が立っていた。
帽子にサングラス、すらっとした長身…
「あっ！この前の…。」
私はとても驚いた。オーナーの隣にいたのはこの前の『Begin』の人。…でもどうして？

「Aさんの知り合い？」
「いえ、知り合いじゃないんですけど… なんていうか…。」
オーナーの問いかけの返事に困った私。

「とにかく何か拭くものと温かいコーヒーでも淹れてあげてくれないか？このままだと彼、風邪ひいちゃうぞ。」
そういえば、彼は服も髪の毛も濡れていてとても寒そうだった。

「あっ、はい。ちょっと待っててくださいね。」
私は店の奥に行きタオルを探し、彼に手渡した。

「ありがとうございます。」
ハニカミながら彼はタオルを受け取ると､帽子とサングラスを外し、濡れた顔を拭いた。
初めて見た彼の素顔はとても優しい雰囲気で、私はつい見惚れてしまった。

「…何かついてますか？」
そんな私に不思議そうに彼が尋ねてきた。

「えっ、何でもないです…。コ、コーヒー淹れてきますね。」
私はその場を逃げるように奥のキッチンに入った。
見惚れてました…なんて恥ずかしくて言えないっ！(照)
私は少し赤くなった顔を気にしながら、コーヒーを淹れた。