もう、春だね

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Aさんの結果

にのみやかずなり:１「おい、二宮」

びくっと肩を震わせる。
そのことを知ったのは一昨日の夜。
俺の養父である人が言っていたことを
ふとしたはずみに聞いてしまった。
いつかは来ると分かっていた。

「翔を追い出したの
お前の親なんだって…？」

そう、そうだよ。
意外にも気持ちには余裕がある。
もともと友達は少なかった。
翔さんにいつもくっついていた。
翔さんがいない今
何が起ころうが気にならない。

気づけば睨みつけていたらしい。

「お前、翔の親友だったろ？！
なんで止めなかったんだよ！」

止められる、はずがない。

大企業が経営するマンションに
数年前まで住んでいた俺は
エレベーターからの発火事故から
引火したガスの爆発に巻き込まれ
家族をみんな失った。
ついでに当時の親友にまで
会うことができなくなってしまった。
利き手だった左手の自由も失った。
あの火災で亡くなったのは
エレベーター横に住んでいた俺の家族。
怪我人はその横に住んでいた智、と
智の両親が会社に泊まり込みの中
寂しいからと言う理由で
智の部屋に泊まらせられていた俺。

俺の引き取り手はその企業の社長だ。
あいつは俺のことなんて
何とも思っていない。
強いて言うなら飼い犬のような存在。
いや、飼い犬以下かも知れない。
ご飯をあげて世話をしたならいい
そんな、存在にすぎない。

止められるわけがなかった。

とうとうクラスメートにばれたのか。
相変わらず余裕のある頭は
俺の人生そのものを表しているみたい。
一週間前
翔さんが幼い弟とともに
姿をくらました日
俺は、泣いて泣いて、熱を出した。
震える指でメールを打った。
彼がいないと俺はやっていけない。
今だって、そうだ。
彼がいない世界では
俺は悲しみも苦しみもしない。
はずだった。

「ん…」

数日ぶりに携帯を開く。
授業開始のチャイムが鳴ったが
特には気にしない。
画面上に現れた三文字。
嬉しさよりも辛さが押し寄せてきた。

返せる、わけがない。

櫻井翔

あなたのほとんど消え去った幸せを
さらに、さらに奪った人に
俺は命を預けてるんだよ。

「に、二宮…？！」

さっきまで俺を怒鳴りつけていた
隣の席の奴が瞳に映った。