ユノとAさんのお話
第81話：それだけで幸せ朝ご飯を食べ終えた僕達は、部屋を出る準備をした。
僕は歯を磨いて髪の毛を直す程度だったけど、Aは大変だ。
片付けをした後に、身支度を整えなきゃいけないからね。
Aのメイクが終わるまでリビングで待った。
僕だけ先に出るのも…と思ったし。
「お待たせ、ユノ。行きましょうか」
「うん。Aの気が向いたら、また食べさせてくれる？」
「そうね。食材も準備して、腕によりをかけて作るわ。
昨日の炒飯も今朝の料理も、簡単に出来るものだったし。
それにもっときちんとしたお礼がしたいもの」
「それは炒飯と朝ご飯で十分だよ。気にしなくていいよ」
「ううん、それじゃ私の気が済まないわ。
昨日と今朝の料理だけじゃ、ユノがしてくれた事に対してまだまだ足りないもの」
「僕は大した事してないのに…」
「私がユノに作ってあげたいの。それだけ感謝してるのよ」
本当に僕は昨日、大した事はしてないのに。
泣いてるAを優しく抱き締めて慰め、
その後に１人で帰ったのを追いかけて、
家まで連れて来てココアを入れた。
その後も他愛もない話をして、寝る時に手を握っただけだ。
だけど夜中に寝ぼけて無意識のうちにベッドへ入ったのに、
Aはそれに怒るどころか
【ユノの匂いって安心するの。もう少しこの匂いを感じていたい】と言った。
しかも僕の胸元に擦り寄って
【ユノの匂いだったらきっと、どんな匂いでも好きになれるわ】とまで言ってくれた。
それだけで僕は幸せだと感じたのに。
駅までの道を歩きながら、僕はこう言った。
「A、本当に気が向いたらでいいからね？」
「私は作る気満々でいるけど？ 昨日、側にいてくれたお礼なの。
ユノがいなかったら、よからぬ事を考えたかもしれないわ」
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作者名：haruka | 作成日時：2010年1月1日 0時
