ユノとAさんのお話
第72話：期待に応えたい「ユノ、今日は本当にありがとう。
ユノがいなかったら、どうなってたか分からなかったわ」
Aはさっきより幾分マシな笑顔を見せてくれた。
だけどまだ僕が見たい笑顔じゃない。
「ううん、僕は何も…。少しでも元気になってくれて良かった」
「ユノ、もう少し甘えていい？」
「うん、何？」
「私が眠るまで、手を握ってて欲しいの…。今晩は１人になりたくない…」
「僕でいいなら、朝起きるまで手を握っててあげるよw」
「コマウォ…」
Aから
【眠るまで手を握ってて欲しい。今晩は１人になりたくない】
と言われ、本当はすごくドキッとした。
だけどそこで僕が慌ててしまったら、
Aは言った事を後悔して、
取り消してしまうんじゃないかと思った。
だから笑ってその場の雰囲気を軽くしたかったんだ。
何があったかは分からないけど、
辛い時に僕を頼ってくれたんだし、その期待に応えたい。
Aは僕に毛布を出してくれて、
着替えてからメイクを落してベッドに入った。
正直に言うと僕の鼓動は、普段よりも何倍も速くなっていた。
だって、寝室に入るのは初めてだから。
そんな中で、愛する人の寝顔を見てから眠れるなんて…。
Aが寝室にしているのは、
リビングは別にして家の中でも１番大きな部屋。
だからなのか、ベッドも思ってたより大きかった。
「大きいベッドだね。セミダブル？」
「ううん、ダブルよ。お母さんと一緒に寝てたからね」
「広いベッドに今は１人で寂しくない？」
僕にとってこの言葉は、他の意味はなかった。
もちろんやましい気持ちも。
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作者名：haruka | 作成日時：2010年1月1日 0時
