ユノとAさんのお話
第70話：言いようのない不安僕の考えてる事が分かってるのか、笑顔を見せたけど…。
だけどこの笑顔は、無理して笑ってる顔だ。
口角は上がってるけど、目が笑ってない。
些細な表情の違いが分かってしまう位、
僕はAを想ってるって事なんだろう。
それが分かったとしても、僕は嬉しくないよ。
Aの本当の笑顔が見たいんだから。
「ご飯炊いてあったから、キムチ炒飯作ったわ。
わかめスープも。お口に合うといいけど」
「コマウォ、A」
Aはそう言い、キムチ炒飯とわかめスープを作ってくれた。
そう言えば、Aの手料理を食べるのは初めてだ。
デートで一緒に食事はしてるし、
お母さんのいる時に家にも上がったけど、
料理を作ってくれたのは初めてかもしれない。
スープを口にしてから、炒飯を食べた。
「美味しいよ、A」
「そう？ よかった」
「炒飯も僕にはちょうどいい辛さだよ。料理上手なんだね」
「そんな事ないわよ」
「ううん、本当に美味しいよ」
「コマウォ、ユノ」
「Aは食べないの？」
「私はユノから最初の電話があった時、ちょうど食べてたの。
だからお腹空いてないわ。ゆっくり食べててね、ユノ。
キッチンを片づけて来るから」
Aはそう言ってキッチンへ行ってしまった。
僕はその後ろ姿に、何だか言いようのない不安を感じた。
Aが変な事考えてる…って意味じゃないよ。
もっと別の何か…。
だけどこの時の僕には、その不安が何なのか分からなかった。
それを知るのは、もう少し後の事。
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作者名：haruka | 作成日時：2010年1月1日 0時
