ユノとAさんのお話
第69話：僕に出来る事そして僕達はAの家に到着した。
まずはAをソファーに座らせて、落ち着かせるのに
何か飲んだ方がいいと思い、キッチンへ行ってみた。
ココアを見つけたから、ミルクを冷蔵庫から出して温めた。
家に入った時には泣きやんでいたけど、
それでも暗い顔で俯き加減のままだった。
何もしないって言ったし、理由も無理には聞かないって言った。
だから僕には、これ位しかしてあげられる事はないけど…。
ココアを持ってリビングに戻ると、Aは
ソファーの上でクッションと一緒に膝を抱え、それに顔を埋めていた。
「A、温まるし落ち着くよ。ココアいれたから飲んで？」
肩に手を置いて声をかけた。
力なく顔を上げ、無言でカップを受け取った。
「…」
「少し熱いから気をつけて飲んでね」
それから少ししてココアを飲んで落ち着いたのか、
Aはやっと暗い顔から普段の表情に戻った。
それでも僕はAの側を離れられないでいる。
まだ笑顔は見せてくれないから…。
Aが笑顔を見せてくれるまで、僕の方が安心出来ない。
飲み終わったカップを持ったまま、Aはスッと立ち上がった。
「A？」
「ユノ、ご飯食べた？」
「え？」
「デート断っちゃったから、食べてないんじゃないかと思って」
「いや、仕事の時に少し食べたから大丈夫だけど…」
「でも走って追いかけてくれたんでしょ？
少ししか食べてないんじゃ、お腹空いてるんじゃない？」
「空いてると言えば、そうかもしれないけど…。平気だよ」
「今から何か作るね。今日のお詫びとお礼に」
Aはそう言って、キッチンへ行く前に笑顔を見せた。
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作者名：haruka | 作成日時：2010年1月1日 0時
