囲われたミツと花【前編】

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「何をされた？！ほっぺた、紅くなって…、」
「何もされてないよ、玉ちゃんが助けてくれたから」



玉ちゃんも冷たくないかと、心配になる。



「…良かった、間に合ったみたいで。とにかく戻ろうか。」
「ケーサツは？」
「あー、あれは、嘘。呼ぶ暇なんてなかったよ、必死だっつーの」



ホッとしたように眉を下げる玉ちゃんはため息をついた。



＊


すぐに、玉ちゃんは上着をかけてくれた。
自宅に招いてくれて、風呂を沸かしてくれた。
汚れた下着やシャツは洗うからと、洗濯機を回してくれた。



理由を聞く前に、まず俺の身体を心配してくれるそんな玉ちゃんは本当に優しくて、また助けられたことに申し訳なく思う。



温もらせてもらった後、洗面所には、ジャージと袋に入った新品の下着が置いてあった。
『 これを着て』というメモと一緒に。



甘えさせて頂き、着替えた後洗面所を出た。
本当に人に甘えてばかりの人生だと、情けなくなる。外に出たいと思い始め、外が安全なところだと安心したのもつかの間、過去に引き戻された。



外は、安全なところじゃないと。


少しぶつかってしまっただけで、カツアゲされ、殴られ、襲われそうになってしまった。
男なのに。情けない……



「…玉ちゃん、ありがとう」
「髪乾かしてあげる。おいで」



ふわりと、笑ったその手には、ドライヤーが握られていた。
ソファに座り、その脚元にふかふかそうなクッションがある。そのクッションを「ここココ」と指して。



促されるまま、その脚の間に座る。



「常連さんがさ、ミツが連れ込まれる所をちょうど目撃したみたいで、飛んで報告しに来てくれたんだ」



聞いた時は、マジ焦った…と背後から抱き締められる。あの男は玉ちゃんに似ていた。でも、全然違う。玉ちゃんに、抱き締められると…こんなにも胸が締め付けられて、でも安心する。恐怖心も過去も重ならない。



水をかける、という事は助ける手段でもあると上書きしてくれた。




「…ミツ、本当に何もされてない？何で連れ込まれたか聞いていい？」



その質問に、小さく頷き、経緯を話すと…
玉ちゃんは何も言わなかった。ただひとつ、「タイミングが良すぎるね」と零した。…悪いじゃなくて？とは疑問に思ったけど、言い間違いかな、と流してしまった。




「ミツは、花のように可憐で蜜のように甘いから…人を惹きつけちゃうのかもしれないね」





殴られた方の頬にキスをしてくれた。労わってくれてるかのように。

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