会えない数だけⅤ ～Next series～ (ページ28)

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Myuto.

「着いたって」

『そっか』

季節は巡って、春が来た

鈴音はとうとう高校3年生になり

利音はアメリカに旅立った

洗濯物を見れば、3人分しか干されていないし

食洗機の中を覗いても、利音の食器は一つも無い

1人いないだけでこんなに空気がガラッと変わるとは

思っていなかった

鈴「お兄ちゃん、いつ帰って来るの？」

「んー、いつだろね～」

ダイニングテーブルの椅子に体育座りしながら

スマホを弄って彼女に聞いてくる鈴音に

ソファで俺の背中にもたれながら雑誌を見て答える

『利音のことだから、自分が納得行くまで
帰って来なさそうだね(笑)』

鈴「お兄ちゃん、努力家だもんね」

「とか言って直ぐ帰って来たりして(笑)」

『そんなこと言うなよ(笑)』

3人しか居ない空間でも、笑いが絶えない

テレビボードにはハワイに行った時の写真に

最後、空港でやっすーに撮ってもらった写真

どんどん増えていく家族写真

鈴「ゴールデンウィークさ、会いに行こうよ！」

「あー、そうだね、会いに行こっか」

『俺また仕事詰め込みじゃーん』

「別に行きたくないならいいけど」

『嘘です、行きます、頑張ります』

男が1人減ったところで

俺の扱いは相変わらず変わらないけど

突然何か変わるよりかは全然マシ

「あ、これ可愛い」

『ほんとだ、家族お揃いなんだねそれ』

「別に誰も着たいとは言ってない」

『またまた～(笑)』

ほらね？

利音、お前が思うに何も変わってないから

変わってても、何も心配しなくていいから

今、目の前にあることだけを一生懸命

やればいいから

『利音に送ったら着たいって言うかもじゃん』

「そんなこと言うわけないでしょ」

鈴「ママこれでしょ？
それ昨日本屋で立ち読みしてて利音に送ったら着たいって」

『よし！買おう！』

いつでも心は通じてるよ

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