会えない数だけⅤ ～Next series～ (ページ24)

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「森田くん、成績は十分足りてるんですけどね」

夏休みも終わり、明けて利音の三者面談

あれから進路の話もせず、家でも全然会話せず

本当にろくに話もしないまま今日がやってきた

「息子が家で見てる資料は先生が出されたんですよね？」

先「そうですね、彼自身に合ったものを」

「その割にはなかなか決まらないんですけど、
真剣に考えてくれているですか？」

利「ちょ、ママ」

「こんなに夏休み前から必死に息子は悩んで
成績が足りてるからってそこで息子が才能を開花するか
分からないのに幅を狭くしないでもらえますか？」

先「森田さんには此処に行ってもらいたいと思って」

「それってただの先生の我が儘ですよね？」

利「ママ、もういいよ、帰ろう」

「、、はぁ、分かった」

あまりにも担任が適当過ぎて腹が立って

思わずヒートアップしてしまった

「、、ごめん、利音」

利「や、大丈夫」

帰り道、私達の間には気まずい空気が流れていて

さっき言ってしまったことを後悔している

利「ママ、あのさ、」

「夜ご飯、何食べよっか！
パパ今日帰ってくるの早いしパセリご飯にする？
あーでも鈴音が焼肉食べたいって言ってたしな～
でも今日は利音の日だから、「ママ！」

利「ごめん、本当にごめん」

「ちょ、利音、やめてよ」

利音が何か言おうとしてたのは分かってた

何を言われるのかも分かってた

だけど子供の口から言われるのが嫌だった

逸らそうとしてご飯の話に持っていったけど

利音にはバレバレだった

突然立ち止まって深々と頭を下げて

これじゃあ私が悪者みたいじゃない(笑)

利「真剣に俺の進路考えてくれてるのに、こないだ
あんなこと言って本当にごめん。
謝っても許されないことくらい分かってる。
でも俺、あんなこと一回も思ったことないから、
分からないけど不意に出ちゃって、、」

「利音、はい！」

利「え？」

「いいから、行こう」

私から少し離れていた利音の手を取って仲良く歩く

「確かに言われた時は悲しかったけど、利音がそんなこと
思ってないことくらい分かってるからね(笑)
ママもごめんね、熱くなり過ぎた」

利「俺、ちゃんと決めたから」

「何を？」

利「進路」

「そうなの？」

また立ち止まって少し俯いて、自信なさげに言う姿は

昔の私に少し似ていた

利「俺、美容師になる」

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