会えない数だけ (ページ5)

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もう誰も入って来ない教室

バレないだろう、と窓側の一番前にある

先輩の席に着く

微かに香る柔軟剤と香水の匂い

机に項垂れながら出逢った時のことを思い出すと

何故か、涙が止まらなくなる

「私、こんなに好きだったんだ」

自分が思うより、ずっと好きだった先輩

もう一緒に登下校出来なくなる

帰りに迎えに来てくれなくなる

寄り道も賭けもできなくなる

365日、先輩がいなかった日なんてなかった

『ここにいたの？』

「美勇人先輩」

『まじ探してんだからね？』

「ごめん、なさい
先輩だって女子に囲まれてたくせに」

突然現れた先輩にどう接していいか分からなかった

『嫉妬か～？(笑)
って、泣いてた？』

「違うし、、、」

『来て』

「いい、今はいい」

『いいから来て、早く』

嫌々ながら先輩のいる一番後ろの席までやってくると

腕を掴まれて視界が真っ暗になった

あっ、この香り

包まれてようやく分かる先輩の温もり

『今なら泣いてもいいよ
でも、俺がいないとこで泣くなよ？
すぐ助けに来れないんだからさ』

「泣いてないもん」

『強がりだな～(笑)
俺がいなくても登下校平気？
寄り道出来ないよ？賭け出来ないよ？』

「、、、だ、やだよ、離れたくない」

気づいたら本音をポロっと囁いて

思いっきり泣いていた

『A、好きだよ』

桜が舞う中、教室で交わした最初で最後の

口付け

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