会えない数だけ (ページ29)

今日:5 hit、昨日:13 hit、合計:179,166 hit

028 ページ29

.

マ「着いたら連絡してね」

「うん、分かった」

パ「行くぞ」

「うん。ママ、行ってきます」

マ「楽しんでね、行ってらっしゃい」

玄関でママに最後の挨拶をし、キャリーケースを持った

パパに呼ばれ車に乗る

車に揺られて15分

あのことがあってから全く話さなくなった私たち

パ「美勇人くんには、言ったのか？このこと」

「、、、言ってない」

パ「そうか」

あれ以来美勇人というワードは家で言わなくなった

もちろん話だって誰もしなかった

「今更なに」

1年半も会わないから言うなら今のうちだと思い、

一か八かで聞いてみた

パ「悪かった」

「は？」

パ「パパのせいでこうなった」

「美勇人パパのせいって言ってなかったよ。
どうせ気まぐれで言ったんでしょ、感情的に
流される部分あるしあの人」

パ「もっと大人にならないとな、って言った。
自分自身見つめ直したかったんじゃないのか、って
だから距離置こうってな」

「同居とは関係ないじゃない、それ。
自分たちだってこの歳で同居したくせに。
同じ思いさせたくないとかさ、やってみなきゃ
分からないことだってあるんだよ？
この留学だってそうだよ。めっちゃ怖いし1人だし
頼る人誰もいないけど、やってみなきゃ何も始まらない。
それと同じでしょ？ねえ、パパ違う？」

後部座席でこれでもか、ってくらいパパに言う

パ「、、、考えとく」

「何考えとくって」

" 考えとく "

大人は返す言葉が見つからない時

都合のいいようにこう言い返す

忘れた頃に聞くと

" そんなのあったっけ "

なんてとぼけてなかったことにする

親のくせに情けない、なんて思ってしまった私は

あと10分で空港に着くというのに赤信号で止まった瞬間

キャリーケースを持って車を降りた

やっぱり大人は嫌いだ

.