境界線Ⅱ (ページ41)

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Hokuto.

妹のためにあんなに頭を下げる人は初めて見た

『お兄さんかっこいいな』

「うん、お兄ちゃんはずっとかっこいいよ」

男の俺が見てもかっこよかった

自分と同じ境遇に合わせたくなくて

妹の彼氏に頭を下げるなんて

後にも先にも見ることはない

彼女がお兄さんを尊敬する理由が分かる

『お兄さん、普段何してんの？』

「ダンサーしながらバイトしてるよ」

『ダンサーか』

「さっきのお店の涼太くんと一緒にやってるの
ダンスやってる人の中じゃ有名なんだって
私そういうの疎いから分からないけどお兄ちゃんと
涼太くんのダンスは本当に凄いんだ～」

『そんなに言うなら見てみたいわ』

「じゃあ今度行こう！」

家族の中でちゃんと頼れる人はお兄さんしか

いないんじゃないかと話していると思う

お父さんは仕事でいっぱいそうだし

お母さんの名前はあまり出てこない

幼い頃からお兄さんと過ごしてきた彼女は

誰かに取られるのが嫌で離れるのが嫌で

『そうだな』

俺と別れるという話が上がるよりも

何倍も辛いと思った

満面の笑みで頷く彼女の表情は

とにかく輝いて見えた

.