年の功 ページ3
インターホンのスイッチを押すが、思っていたよりも軽い圧力でカチッと押すことが出来た
…音は鳴らない
「壊れてんじゃねーの?」
「かもね」
悟は特に気にした様子もなく堂々と敷地内に足を踏み入れた
「…電気メーター動いてねぇな 留守じゃね?」
傑はヒョイっと家の横に回り込み、庭を覗いてみた
「あ…!」
反射的に物陰に隠れる
縁側にボンヤリと座っている お婆さんがいたのだ
「誰かいたか?」
「あぁ…どうする、声掛けてみるかい?」
悟は一言、「当然」と言うと庭へズカズカと入っていく
傑もその後を追って中へ入った
「おい婆さん」
「…」
老婆はゆっくりと悟に目を向けた
その目を見た瞬間、2人は多少驚いて目を見開いた
「…どちらさんだい?」
ニコニコと優しく笑っている老婆
悟は老婆を見つめてボウッと立ち竦んでいる
傑は少し屈んで、老婆と視線を合わせる
「私達は東京から来た学生です …ご婦人はAちゃんのお祖母様で間違いないですね?」
「まあ そんな遠いところから…お茶でも入れようかい?」
どこか少しだけ話が噛み合わない
「いえ、長居はしませんのでお気持ちだけ…この家で"猫"って飼われてますか?」
「えぇえぇ飼ってるわよ…ほら、今もミィちゃん あそこに座って…私達のことをジィーっと見てる…」
そう言って指さした方に目を向けると、そこには3つほど積まれた石があるだけ
恐らく…猫の墓だろう
…既にミィは亡くなっている
「…どうやら現在と過去の記憶が入り交じってるみたいだね」
「こんな婆さんに話を聞いたって意味ねぇって…」
そう言って悟は老婆から少し離れた縁側にドサッと腰掛ける
「ありがとうございます …最後にミィちゃんと挨拶していっていいですか?」
「あら…どうして猫を飼ってることを知ってるんだい?」
「…はは」
少し誤魔化すように笑った後、傑は猫の墓の前で深く合掌した
「おい」
突然聞こえた 低くドスの効いた声
…昨日聞いた、あの怒号
パッと振り返ると、玄関の方に麦わら帽子を被ったAの祖父が立っていた
「お前ら…何勝手に俺の庭に…ッ!!」
その時、傑の姿を見た老人は言葉を止めた
「お前…」
傑が猫の墓に向かって手を合わせている姿
それを見た途端に老人は何も言わず、ただゆっくりと歩み寄ってきた
「…猫に手ぇ合わせてくれてたのか」
「あ…はい…」
突然の変わりように、そう答えることしか出来なかった
「…そーか」
149人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
セイ - いやーそう思えて頂いて良かったです もう少しで過去編が終わって一時休載になりますね…またアニメ2期が始まると同時に再開する予定ですので、ぜひぜひロビンさんには楽しみにして下されば幸いです (2021年5月17日 23時) (レス) id: 8e72f4c5b9 (このIDを非表示/違反報告)
ロビン - なんかもう色々しんどい、、!!最後泣いてたのってごじょせん達との思い出が消えたって考察でいいですかね?!しかもミィちゃん、、!!(TT)つらすぎふ、、、 (2021年5月17日 21時) (レス) id: 5a02811cab (このIDを非表示/違反報告)
セイ - いつもありがとうございます!伏線…どうでしょうかねぇ? (2021年4月26日 0時) (レス) id: 8e72f4c5b9 (このIDを非表示/違反報告)
ロビン - 更新おめでしゅ!!今日最初から読み直しました笑最初の方に祖父の件がチラッと出てビックリしました!最初からこの話の伏線を、、、? (2021年4月25日 1時) (レス) id: 5a02811cab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:セイ | 作成日時:2021年4月24日 2時