呪術廻戦〜貳爪探し〜其ノ二

既視感 ページ39

目の前に現れた呪霊は､瀕死の私を見て歓喜している

頭から流れている血のせいで､視界は悪く…何より腕は折れ､左腹は酷くえぐれていた

由梨のお陰で多少マシとは言え､今すぐ横になりたい気分…

「シシシしぬノぉぉお？？？」

キャッキャと笑いながらクルクルと回って煽る呪霊

…大丈夫 さっきの枝野郎よりずっと弱い

時折､少し離れた場所から砂埃と呪力が巻き上がっている

…恐らく虎杖と東堂…そしてあの枝の呪霊

虎杖は強い

彼なら勝てると分かっている

«Aもォ…強いヨォォぉお…？？»

…ありがとね

私は頬を少し緩めると､呪霊に向かって僅かに笑いかけた

「…あァ？？」

私の反応が気に食わなかったのか､呪霊は私に向けて呪力の粒を指で弾いて飛ばしてきた

右の頬を掠め､チリ…と血が滲んだ

私はズキズキと痛む横腹を抑えながら､呪霊の元へ歩み寄る

「…？」

何か違和感を覚えたのか､呪霊はジリと後ろに少し後ずさった

そんな呪霊を他所に､私は呪霊の真横で少し止まる


『───邪魔』


私はそう言うと､笑顔で呪霊の頬と思しき場所へ手を当てた

怒りからか､呪霊の拳はブルブルと震えて真っ赤に染まった目で私を見つめる

「しぬ…ッ？」

そう言って､呪霊は突き出した掌に呪力を集束させようと試みる

…しかし呪霊は､自身に起こった状況に理解できず呆けた顔で自分の掌一点を見つめた


「な…ナナなななんで…？？」


呪霊がそう呟くのと､私が懐に収めていたマシェットナイフで首を落とすのが同時だった

破壊された呪霊は苦しげに呻く

砂のように風に流されていく呪霊

私は痛みに耐えきれなくなり､その場にしゃがみ込んだ

…呪霊が最後に言った言葉

"なんで？"

あの呪霊を祓う間際…彼奴は確かに攻撃を仕掛けようとしていた

けれど…

…それだけが私の中で引っかかっていた

次の瞬間､空が突然明るくなる

パッと空を見上げると､帳が上がっていく様子と…小さな人影が一つ

ギュッと目を細くして目を凝らす

見えたのは五条先生の姿

目は良い方…それに加えて､由梨が憑いているお陰で五感を含めた全ての身体能力が底上げされているので輪郭もハッキリと見えた

けれど 何処か違う

…そうか 目隠しをしてないんだ

そう言えば､五条先生の顔をちゃんと見るのは初めて…

『…？！』

白髪､吸い込まれそうなほど綺麗な瞳､端正な顔立ち…

頭が割れそうな程の頭痛

動悸は段々と速くなっていく

…見覚えのある顔と声が繋がった気がした

対面→←答え

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