呪術廻戦〜貳爪探し〜其ノ二

一言余計 ページ37

私より数メートル離れた先で膝をついている狗巻先輩を見て､私は半ばパニックに陥る

狗巻先輩の呪言があったお陰で成り立っていた この状況は既に壊された

それに加えて…

…誰よりも尊敬している"先輩"の瀕死の姿に､脳が必死に状況の理解を拒否している

私が術師という存在である意味

役立たずとは言え､誰かを援護しフォローすることが責務

それら全てを放り投げ､私は狗巻先輩の元に駆け寄ってしまう

馬鹿だよね

分かってる

今の私は何処かイカれてたんだ

次の瞬間…隙だらけとなった私の横腹は､呪霊の尖りきった枝によって無惨に飛び散った

『カハ…ッ！』

口から血が噴き出す

フワリと身体が浮くような浮遊感

足に力が入らず､身体は私の意思に反して倒れていく

薄らと開いた瞼から､どこか絶望したような表情で見つめている先輩の姿が目に入った

「紅莇！！」

伏黒の声も遠のき､私は頭から地面へと真っ逆さまに落ちていく

『…由梨』

私は消え入りそうな意識の中呟いた

───

日も暮れ始めた食堂

夕日が直接射し込むその場所は､電灯をつけなくても明るい

『…え？尊敬してる先輩？』

「そ 私は勿論真希さん！伏黒は乙骨…？とか言ってたけど､私見たことないから」

野薔薇の質問に､私は口元へと運んでいたスプーンの手を止めて少し悩んだ

『狗巻先輩､かなぁ…』

悩んだ末に出た答え

何処かフワフワとした回答に､野薔薇は首を傾げた

「へぇ､意外 Aならパンダ先輩って答えると思ったわ よく一緒にいるし」

『まぁ あの人のアドバイスは結構的確だけど パンダはパンダでしょ』

「…違いない」

そう言って笑いながら､野薔薇は夕飯のカレーを口に運んだ

その時､食堂の入り口からドンッと部屋が揺れるほどの地響きが起こった

「なんで！なんで俺には俺だけ､慕ってくれる可愛い後輩がいないんだよぉぉぉおおおっ！！！」

「そういうとこだよ」

「しゃけ」

そこにいたのは2年の先輩方

いつから話を聞いていたのか､パンダ先輩が大きな拳で床を叩きまくっている

『あぁー…勿論パンダ先輩も尊敬してますよ！』

「そーゆー社交辞令が一番傷つくってことお前知らねぇんだろぉぉぉ…」

…ダメか

「…にしても､お前 なんで棘なんだ？あんま接点なかっただろ」

「ハッ お前まさか…」

パンダ先輩がポッと頬を赤らめて煽るようにニマニマと笑う

『…違いますからね ぶっちゃけタイプじゃないですし』

「…」

「お前それはそれで棘が傷つくぞ」

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