呪術廻戦〜貳爪探し〜其ノ二

仲間､友達 ページ35

高専内を1人走り続ける私

伏黒君達は何処だろう

チラリと後ろを振り返ると､波のように畝っている樹木が追ってきているのが見えた

短銃に入っていたゴム弾を捨て､実弾に差し換える

1発後方に向けて撃ってみるが､如何せんダメージが入っているのかさえ分からない

…実弾だって幾らでもある訳じゃない

使いすぎないようにしないと

タンッと低い屋根の上に登り､辺りを見回しながら走る

ふと､加茂の身に付けている黒袴の裾が一瞬だけ見えた

あっちか

次々と攻撃を仕掛けてくる樹木を躱しながら､私は最短距離で屋根の上を駆け抜ける

追いつけ…ッ！


〜伏黒side〜

俺と狗巻先輩､そして京都校の加茂さん

俺達は突然現れた呪霊から逃げ続けているが､それも時間の問題だろう

頭上で帳が下ろされていくのが見える

疑いようもない 異常事態だ

『伏黒ッ！！』

突然聞こえてきた声に､俺は咄嗟に振り返った

必死の形相で腕を伸ばす紅莇

"伏黒"

紅莇は確かにそう叫んだ

"…その時が来たら そう呼ぶよ"

今が紅莇にとっての"その時"だったんだ

振り返った俺の目に飛び込んできたのは､迫り来る木の枝…そして

「紅莇ッ？！」

俺に向かって伸ばされていた枝を､紅莇が何処からか飛びかかり､無理矢理掴んで軌道をずらしている姿

ドサリと地面に叩きつけられる紅莇

紅莇に掴まれた枝は容赦なく腕に絡みつき､強く捻り縊る

『いっ…！』

俺が混乱してモタモタしている間に､紅莇のもう片方の手に握られた銃で撃たれた枝は簡単に千切れた

「紅莇 大丈夫か？！」

「高菜！」

俺は銃を握った腕を引っ張り､身体を起こさせると紅莇を連れて走り出した

紅莇が倒れていた場所は既に樹木に覆われている

『いってて…もっとかっこよく手助けしたかったのにな…』

そう言って笑いながら見つめられている腕は､紫色に腫れ上がってプラプラと頼りなく揺れている

確実に折れていることが分かった

「馬鹿そんなこと言ってる場合か！」

「おかか…！」

「もっと他にやりようがあっただろう 1年？！」

一斉に責められた紅莇は､何処か不満そうに目を細めた

俺は走りながら､紅莇に言おうかどうか少し迷い 意を決して口を開いた

「…ありがとな お前が割って入らなけりゃ､俺は…」

『え？』

走りながらだと聞き取れなかった様子で､キョトンと呆けた顔で聞き返す紅莇

人の気も知らないでいる紅莇に､無性に腹が立つ

「あ･り･が･と･なッ！！」

『なんでキレてんの…？』

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