愛屋及烏 【呪術廻戦】

46話 : 苗字 ページ46

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男は首を動かし、Aと視線を合わせる。






｢……｣

｢……｣






無言で2人は数秒見つめ合う。



Aは気を抜かない。

荒く、肩で呼吸しており、気を抜けば一瞬で意識を飛ばしそうになる。

右腹からは血がとめどなく溢れており、その血は男の服に吸い込まれる。



男が腕が腕を動かそうとする。

が、Aは足でそれを押え、阻止する。



動かせないことがわかると、男は口を開き、






｢……ふっ、あはははは

あー、参ったわ｣






と声を上げて笑い出す。



Aは予想外のことに驚く。

男はそんなAを気にせず、身体を起こす。






｢……わっ…｣






驚き、力が抜けていたAはそのまましりもちをついてしまう。

男はそんな座り込んだAと視線を合わせるように、胡座をかく。






｢あーあ、不意をつけば案外勝てると思ったんだけどなぁ…

上手くいかないもんだな｣






と頭を掻く。



Aは先程までの殺気を向けられていた状態から一変したこの状況をまだ理解しきれていない。






｢……まぁ、久しぶりだな、A｣






と心底嬉しそうに微笑む男。



その笑みは数年ぶりに恋人にでも会ったかのようだ。






｢今まで何処に居たんだ、お前｣


｢……え、｣


｢お前なら直ぐに見つけられるだろうとおもってたから、

家を出たのに放置しやがって｣


｢…あ、の……｣

｢あ？｣






とそこで漸く男はAの言葉に耳を貸す。






｢……誰かと、間違えて、ませんか…？｣

｢はぁ？お前、神々廻Aだろ？｣






と聞き覚えのない苗字と共に名前を呼ばれる。






｢……し、しば…？｣


｢あ？あー、神々廻は滅んだらしいし……

…今は旧姓の方の神籬の方か？｣


｢……ひも、ろぎ…？｣






と新しい情報に頭が追いつかないA。



男は、その首を傾げているAを見て…、






｢……お前、まさか記憶ねぇの？｣






やっちまったと言わんばかりの顔で、そう問いかけた。











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