愛屋及烏 【呪術廻戦】

34話 : 真夜中 ページ34

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｢……んっ｣






夏油は、瞼を開ける。



部屋は、テレビの光のみが照らしている。

夏油はまだ回らない頭で状況を整理する。



完徹すると宣言して、ゲームを続けたが、

日頃の疲れが出てきたのか、五条が途中で寝落ちしてしまった。

その後、家入も寝落ちしてしまい、夏油も2人が寝たならとAをおいて、

自分も意識を夢の中へ移したのだった。



初夏とはいえ夜は少し冷えており

このままでは風邪をひいてしまうと考えた夏油は

昨日寝た部屋にブランケットがあったことを思い出し、静かに立ち上がった。



が、立ち上がって気づいた。

隣に座っていたはずのAの姿が見当たらないことに。






｢……どこに…？｣






辺りを見渡すと、廊下にうっすらと電気が着いているのが見える。

光の場所はトイレ。



恐らく扉を締切っていないため、光が漏れているんだと夏油は思い、

ブランケットを取りに行くついでに

扉はきちんと閉めるように声をかけようとトイレに近づく。



が、廊下から聞こえてくるのは水音ではなく嗚咽。

夏油は後で怒られるのを覚悟で、扉を開く。



そこで夏油が見たのは、嘔吐している姿のA。



長時間ここにいたのだろうか、顔色がとても悪い。






｢…っ、A大丈夫かい？！｣






と急いでAに近寄り、背中をさする。



Aは見られてしまった、と言わんばかりに

目を見開き、疲れきった声で、






｢……ごめ、なさい……｣

｢謝らなくていい、落ち着くまで喋らなくていいから｣






とAの背中を摩り、落ち着かせようとする。



だが、Aは苦しそうに嘔吐を続ける。

胃の中は空になっているのか、胃液しか出ていない。



そこで夏油はようやく気づいた。



あんなに細い身体だ。

今まで十分な食事を取れていなかっただろう。

なのに、昨日今日でいきなりカレーなどを口にしてしまえば

身体はそれを受け付けないはずだ。



思い返せば、数時間前もAはお菓子に手を出していなかった。

恐らく、昨日もこうやって隠れて嘔吐していたのだ。

心配かけまいと、隠れて。






｢謝るべきは私たちだ

すまない、君の身体のことをもう少し考えるべきだった｣






夏油は眉を下げる。



申し訳なさからか、

それとも気づけなかった自分への怒りからか、

手が震える。



撫でている手が止まり、俯いてしまう。










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