110【ルート解除】 ページ38
私は思いきって日記を開けてみることにした。
慎重に恐る恐る表紙に手をそっと重ねると、急にパラパラと自動的にめくりだした。
「な、何?!これ」
後ろを振り返ると、なかむさんは静かに泣いていた。
声にならない叫び声を一人で静かに溢していた。
さらに勢い良くパラパラパラパラと頁が動き出す。
すると、一頁ずつの間から一枚、また一枚と写真が空に向かって飛んでいった。
また一枚...ほら、また一枚。
数えきれないほどの写真が空に舞い上がった。
頭が追い付かない私は、今自分がどんな状況に至っているのか全く理解できない。
「...桜」
舞い上がった写真は桜の花弁へと変化し、空をひらひらと舞っている。
一枚の花弁が私の鼻の先に乗った瞬間、突然私は浮遊感に襲われた。
慌て足元を見ると、先程まで立っていた地面は無く、その代わりに豆粒以下に小さくなった土地がみえた。
「ど、どういう...?!なかむさん！！」
右を見ても左を見ても、彼の姿は何処にもない。
雲を突き抜けて、さっきよりも大きくなった地形がはっきりと見えるようになった。
「あ...お城?白城?!」
純白の城は見たこともないくらい美しいものだった。
その美しさは上空から見てもすぐに伝わる。
「我々の城まで...じゃあ、此処は前世の?」
この世界があの日記の中なんだとしたら...
...
「うわっ...！！」
地面が近づいて、もうダメだと死を覚悟した矢先、落ちるスピードは緩やかになった。
私が降り立った場所は白帝国と我々国の境目である国門だった。
「...！！」
白帝国側に一人。誰かが私を見つめていた。
それが誰なのかすぐにわかった。
「お姉ちゃん...」
鮮やかな茶髪に山吹色のマフラーをなびかせた姉、シェルだ。
si「久しぶり、A」
私の首に巻かれた黒のマフラーは暖かかった。
栗色に透き通った髪が風によって乱される。
si「また会えて良かった...ここがこの世であったら、私は...私はｯ...」
姉は両手で目を押さえた。
指の間から溢れてきた涙は透明で、どんな思いが籠っているのかなんて私にはわからない。
si「私のせいで苦しませちゃったね」
「私のせいでお姉ちゃんは死んじゃった」
私の言葉を聞いたシェルはふっと笑った。
si「私ね...この前世を遡れる日記を手に入れたとき、本当に嬉しかった。
自分の前世が詳しく知れるなんて、これ以上に興味を祖剃られるものは無かったわ」
シェルは私の持っていた漆黒の日記を、それはそれは大事そうに両腕で包み込んだ。
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葡萄。 - わんぱんさん» 最初から見て頂きありがとうございます!!楽しんでいただけたようで何よりです!(^∀^) (2020年8月17日 12時) (
レス) id: 0d09c9d04a (このIDを非表示/違反報告)
わんぱん - 最初から見てきました！面白かったです！素敵な作品をありがとうございました！(^o^) (2020年8月16日 22時) (レス) id: b542029aeb (このIDを非表示/違反報告)
わんぱん - シリーズ物の途中から読んでることにたった今気づきましたww最初から見てきます！(｀・ω・´) (2020年8月16日 20時) (レス) id: b542029aeb (このIDを非表示/違反報告)
葡萄。 - レモンさん» ありがとうございます!恥ずかしい...。 (2020年5月8日 23時) (レス) id: 0d09c9d04a (このIDを非表示/違反報告)
レモン - 何回も見たくなります。泣ける (2020年5月7日 16時) (レス) id: a277319c5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄。 | 作成日時：2020年1月23日 23時
