102 ページ30
黒いマフラーをなびかせた少女。
栗色の髪に青と緑のオッドアイな女。
それは私。
前世の姿であった。
目の前で行われた殺人に私は視線を逸らそうともしなかった。
自分が行った行為なのだから別に辛くも苦しくもなかった。
os「グルッ...逃げ」
私と戦いながら声を振り絞ったオスマン。
深緑の瞳はまっすぐに狂器の私を睨んでいた。
『ねぇ、どんな気持ちですか?無能に殺される気持ちは！！』
オスマンの右腕にナイフが刺さった。
チーノ君は脇腹を抑えている。
彼の服を紅く染め上げるドロドロとしたもの。
私はなんとも思わなかった。
os「い"」
『ふふ...』
私から溢れた笑みは、気持ち悪く寒気を感じた。
『死んで』
os「このｯ...」
『恨むのは己の弱さにしてくださいな』
振り上げられたオスマンのナイフは私によって蹴飛ばされて、私はオスマンの心臓部にナイフを深く差し込んだ。
「......」
私の足元にまで滑ってきた血まみれのナイフ。
前世の私はチーノ君を殺していた。
「どうせ...殺るんなら」
私はナイフを右手に持ち上げて、姿勢を低くする。
何処か懐かしい。
まだ有能と信頼されていた頃に、ゾムから散々叩き込まれた姿勢に相手の動きの見方。
「昔の自分だよね」
前世の私は窓を眺めながら足を進める。
シャオロンのところに行く前に
「私と戦ってよ！！」
廊下に敷かれたレッドカーペットの真ん中に立ち、赤黒く染まった自らの背中に大声を上げた。
届くはずも無い。でも
ここは前世の記憶の中にいるわけでは無いのだから。
ここは私の脳が造り上げた夢の中だから。
「私があんたを殺したって文句は無いやろ！！」
ピタッと足を止めた目の前の少女は、ゆっくりと後ろを振り返る。
そんな彼女の視線の先にいるのは私で、彼女が右手に銃を持ち引き金に指をかけている。
銃口の先にいるのは私だ。
ゾムの真似をして、黒のパーカーの帽子を深く被る。
コネシマみたいに相手を威嚇して、シャオロンみたいに相手を挑発する。
オスマンみたいにフッと笑みを溢して、ロボロみたいに真っ直ぐ前を向く。
大先生のように余裕の表情で、ショッピ君の真似をして相手を煽る。
ぺ神みたいに周りには最善の注意を払って、トントンのように平常心を保つ。
『その瑠璃色の瞳...何処か彼奴みたい』
グルッペンのように堂々とした背中に、相手を吸い込ませる視線。
『そのグルッペンみたいな瞳...大っ嫌い！！』
「私も貴方が大嫌い」
前世の私に鉄槌を下す。
...
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 516人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葡萄。 - わんぱんさん» 最初から見て頂きありがとうございます!!楽しんでいただけたようで何よりです!(^∀^) (2020年8月17日 12時) (
レス) id: 0d09c9d04a (このIDを非表示/違反報告)
わんぱん - 最初から見てきました！面白かったです！素敵な作品をありがとうございました！(^o^) (2020年8月16日 22時) (レス) id: b542029aeb (このIDを非表示/違反報告)
わんぱん - シリーズ物の途中から読んでることにたった今気づきましたww最初から見てきます！(｀・ω・´) (2020年8月16日 20時) (レス) id: b542029aeb (このIDを非表示/違反報告)
葡萄。 - レモンさん» ありがとうございます!恥ずかしい...。 (2020年5月8日 23時) (レス) id: 0d09c9d04a (このIDを非表示/違反報告)
レモン - 何回も見たくなります。泣ける (2020年5月7日 16時) (レス) id: a277319c5c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：葡萄。 | 作成日時：2020年1月23日 23時
