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薄暗くなった道をゆっくりと歩きながら自宅につく。
「ただいま」と笑顔を作って言う必要も無くなってしまった。
荷物を置いてすぐに、家族の写真を並べた仏壇の前に正座をした。
「皆さんは私に優しくしてくれる」
私が風邪を引いた時にわざわざ来てくれた。
私が死のうとした時に馬鹿かって止めてくれた。
前世の皆さんはこんなに優しくない。
何処か認めたくない自分がいた。
グルッペンが他の皆を紹介してくれたのも、きっと私への気遣いからだったんだと思う。
姉を無くしたショックからすぐにでも立ち直れる様に、としてくれたのかもしれない。
私は仏壇の前に横になり、胎児の様に丸く縮こまった。
...
此処は夢の中だ。
何時もそう自覚していた。
首に巻かれた黒いマフラーに、腰に備えられたナイフ。
前世の記憶の中かと毎回ため息をつくのだ。
ut『Aちゃん?その...』
私の目の前には、現世とはさほど服装の変わらない、前世の大先生がいた。
深く、深く、私に頭を下げている。
ut『すまんかった』
その謝罪の言葉は現世の私に向けられたものか、前世の私に向けられたものか。
間違いなくこれは後者への謝罪の言葉だろう。
「ごめんなさい」
私も謝った。
その場に膝をついて、床におでこを着けた。
「顔を上げて」と誰かに言われたので、ゆっくりと顔をあげる。
顔をあげると、そこには前世の皆さんがいた。
ニコニコと笑う者もいれば、ごみを見るような目で見てくる者もいる。
そんな彼らの真ん中に立つ赤い瞳はこう言った。
俺の仲間を殺したことは一生許さん
そう言われて、暖かい何かが私の頬を伝っていった。
「ハイル・グルッペン...」
膝を着いたまま、右手の握りこぶしを左胸に押し付ける。
忠誠を誓った言葉は震えていた。
...
『A、私はあんたのこと責めたりはしないよ』
目を覚ました直後、ふんわりとした優しい声が耳に届いた。
仏壇の前にふよふよと漂う白い靄。
『大嫌いな幹部を大好きな皆さんに変えてあげたかった...』
靄は形を造ろうとしているのか、動きが忙しない。
『逆にAを困らせてしまったね...』
はっきりとした声に私は目を疑った。
白い靄は消え去り、その代わりに真っ白な顔をした姉が立っている。
『ごめんね』
仏壇に置かれた蝋燭の火が消えるのと同時に、姉も姿を消してしまった。
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葡萄。 - わんぱんさん» 最初から見て頂きありがとうございます!!楽しんでいただけたようで何よりです!(^∀^) (2020年8月17日 12時) (
レス) id: 0d09c9d04a (このIDを非表示/違反報告)
わんぱん - 最初から見てきました！面白かったです！素敵な作品をありがとうございました！(^o^) (2020年8月16日 22時) (レス) id: b542029aeb (このIDを非表示/違反報告)
わんぱん - シリーズ物の途中から読んでることにたった今気づきましたww最初から見てきます！(｀・ω・´) (2020年8月16日 20時) (レス) id: b542029aeb (このIDを非表示/違反報告)
葡萄。 - レモンさん» ありがとうございます!恥ずかしい...。 (2020年5月8日 23時) (レス) id: 0d09c9d04a (このIDを非表示/違反報告)
レモン - 何回も見たくなります。泣ける (2020年5月7日 16時) (レス) id: a277319c5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄。 | 作成日時：2020年1月23日 23時
