太宰治が入水をする理由。

<入水 ２３> ページ24

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｢────大体は話し終えたかな｣



私が口を閉じると探偵社に沈黙が訪れる
周りを見渡せば、話していて気付かなかったが探偵社の殆どの者が私の話に聞き入り動きを止めていた
恐らく、彼処で社長も聞いているだろう


そんな中、敦君が口を開いた

｢えーっと？...結局太宰さんが入水をする訳は...｣


あれ.....言葉間違えたかな.....と微かに敦君の囁きが聞こえる。



｢それはこれからさ

...要するに、私は彼女を殺めてしまったのだよ
だがね...私が探しても後にポートマフィアの者が探しても、彼女の遺体は無かった｣


彼処の川は大して深い訳でも無い。
例え流されたとしても大勢の人数が大捜索でもすれば直ぐに見つかるだろう

だが遺体は見つからない。


｢見つからない筈がない。
私の中である二つの考えが浮かんだのだよ

ひとつは、何者かが私より先に彼女の遺体を連れ去った｣


この可能性は無に等しい
彼女が落ちた時間帯は午前二時辺りの深夜だ
その辺りを彷徨いてる者なんてそうそう居ない

それに、私だって少し硬直していたとはいえ、思考が働いたら直ぐに川に飛び込んだ
そんな中、私より早く彼女を見つけるのは不可能に近い



｢その...Aさん？の遺体を何者かが連れ去ッたとしたら……その人に何か利益は有るンですか？｣

谷崎君がそう云う


｢さぁ、どうだろうねぇ
結局は、彼女と長く過ごした心算だった私も
今考えてみれば彼女について何も知らなかったのだよ｣


書類に記された事
必要最低限の事しか彼女の事を知らなかったしあの頃の私は興味さえ持たなかった






｢嗚呼...入水している理由だったね｣




今はそんな自分を悔やんでいる
もっと、彼女を知っておけばこんな事にはならなかったのかも知れない


これがせめてもの、彼女への償い






｢それは───────……｣









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