黒バス 短編集 【オレンジ】

【愛しい君】　氷室辰也　小雪sリク ページ49

ねぇ、たっちゃん？
　
今、何処に居るのかな？誰と一緒に居るのかな？
　
会いたいよ…ねぇ、たっちゃん。
　
　
「まったく…休みの日にまでバスケだなんて‥。」
　
貴重なオフだというのに、馬鹿な誠凛バスケ部の５人と付き添いのあたしは
　
ストリートバスケの大会の会場に来ていた。
　
物々と、文句混じれの言葉を吐いていると ふとあることに気づいた。
　
「あれ…？皆？」
　
周りに誠凛バスケ部の姿はなく、火神も降旗も…黒子すらも居ない。
　
「ちょ…もしかしなくても、あたし、迷子になっちゃった！？」
　
キョロキョロと周りをもう１度見渡してみるけれど、見覚えのある姿は見えない。
　
「ちょっと…どうしよう。」
　
数百人という人混みの中で、迷子になってしまった心細さから
　
思わず、涙が込み上げてきた。
　
「あれ…A？」
　
後方から不意に声を掛けられ、淡い期待を抱いて振り返る。
　
「え…？たっちゃん？」
　
何年も会わないうちに身体は成長してしまっていたけれど、
　
確かにその姿は、たっちゃんだった。
　
「その鞄‥そうか、誠凛か。」
　
たっちゃんは優しくあたしの頭を撫で、瞳に溜まった涙を拭った。
　
「誠凛なら、あっちで探してたよ。」
　
たっちゃんが指差す方向には、火神の目立つ髪が見えていた。
　
「あ、ホントだ…。」
　
「行っておいで？」
　
その言葉が、あたしを人ごみの中に戻していく。
　
「たっちゃん、また会えるよね！？」
　
「会えるよ…。」
　
　
愛しい君
　
次会うときは、お互い違うベンチだけれど。
　
　
(もー、室ちん何してんさぁ)
　
(久しぶりに『友達』に会ってな)
　
(ふーん、『友達』ねぇ…)
　
　
(友達なら、そんな笑顔しないと思うなぁ…)
　
　

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