新人ライバーは小説家志望！その４

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「なるほど…ここからは提案なんだけど、この事件の裁判が終わるまで配信は休んだ方が良いと思う」
『…』

そう言われると思った。犯人の動機がわからない以上、私が表に出るのは危険だということはわかる。

「それに、全部ことが終わってからの方が配信に集中できるでしょ？」
『…そうですね』
「まぁ、決めるのは空中さんだから…って言いたいけど運営メンバーは止めてきそうだよねぇ」
「そうですね、会社へのリスクも考えると…」

「これを機にライバーを辞めることも一つの結論だとも思うけど」
『辞めないです』
「はは、そう言うと思った。じゃあ辞めない方向で進めていこう」

『あと、入院費ありがとうございます』
「いえいえ、君は暫く仕事できない状態になるわけだし、これぐらい払わせてよ」
「うんうん」

裁判が終わるまで配信ができない、という事実にどこか気持ちが沈んでいく気がした。

「ライバーの皆さん心配されていましたから、空中さんから連絡してあげてくださいね。運営からも連絡はしますが」
『はい、それは勿論』

バタンと音を立てて社長とマネさんは退室した。
ふぅ、と息をつく。これから暫く配信はできない。やれるはずだった予定が全狂い。無駄になったわけではない。先延ばしになっただけ、なっただけ。

なっただけ、なんて軽いものではない。頑張って企画を考えた。色んな人が関わっていた。もしかしたら運営の判断でなかったことになるかもしれない。全て水の泡になるかもしれない。

『…連絡しよう』

スマホでDiscordを開く。
予想していたよりも連絡の数は多くなかった。皆が非情という訳ではなく、会社が事件に巻き込まれて手術中であることを伝えたから、変に連絡をしすぎないように配慮してくれたんだろう。
特に仲の良いメンバーからは連絡は来ている。「この連絡に気付いたら返事が欲しい」と。

ぽちぽちと慣れない左手で画面を操作する。誤字が多くて今までだったらすぐに文章が書けたのに。一つの文章を作るだけで一苦労だ。
今まで当たり前にあったものが欠けたという事実に涙腺が緩くなる。
わたし、こんなにメンタル弱かったっけ。

誤字がないか確認して＠everyoneに文章を送信する。

「無事に手術成功しました。ご心配をおかけして申し訳ありません。暫く配信を休止することにはなりますが、絶対に戻ってきます。」

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