第52話 ページ10
物心ついたときから、みんな私を救世主だと言っていた。
私が生まれた家、蒼崎家は五条家の分家だ。
江戸時代の慶長に当主の弟が蒼崎家を建てたとか。
優秀な呪術師も多くいたため、それなりに活躍したらしい。だが、昭和に入ったあたりから優秀な術師が生まれなくなった。
財政は悪化し、他の家からの評判が落ちた最中、生まれてきたのが私だった。
勿論、女の私の扱いはあまり良くなかったと思う。けど、その時のことはあまり覚えていない。なぜなら、私が4歳になってからの出来事があまりにも色濃かったからだ。
術式の自覚。
人間が持つ、呪力を出力するための型のようなもの。私にはそれが刻まれていた。
強力な術式を持つ子供に家の人間は喜んだ。
「子供を本家に売れば、家の財政が回復する」と。
両親からは「生まれてきてくれて、ありがとう」そう言われた。私の生誕を心から喜んでいた。だが、それは親が子供に向ける純粋な感謝ではないと、幼い私は悟った。
本家に連れて行かれて、当主の前で術式を使わされた。それを見た当主は「まぁまぁだな」と淡々と言い、両親にたくさんのお金を渡した。恐らく、7億くらいだろう。
両親を見れば、そうはもう嬉しそうな顔をして、娘のことなど眼中になかった。
五条Aが誕生した瞬間だった。
五条家に買われた私の扱いは良いものではなかった。理由を知りたかった私は、使用人たちの話を盗み聞きした。
どうやら、江戸時代の慶長に五条家の当主が、禪院家の当主と御前試合で殺し合って両方死んだらしい。そのとき、当主の弟だった男は呆れて、当主の行いに対して良い感情を持っていなかった連中と出奔して蒼崎家を建てたらしい。
つまり、当主が死んで大変なことになっていたにも関わらず、家を見捨てた裏切者の末裔が私なのだ。
完全な八つ当たりだった。
当主には、お前には五条家の呪術師として働いてもらうと言われた。
五条家には五条悟という呪術師がいるが、五条の主戦力が彼だけになるのを避けたいとか。
呪術師になるための訓練を受けながら、私は考えた。
さっさと呪術師になって、この家を出てやると。
例え一人孤独であっても、なんてことはない。
蒼崎家でも一人だったんだから、今更変わらない。
出ていくまでの辛抱だ。
大丈夫、大丈夫。
まだ秋だというのに、妙に身体が冷えている気がした。
手の平に術式を出して体を温める。それでも何故か寒気がした。
私が引き取られた年の冬、一人の男が本家に顔を出した。
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ヨッシー(プロフ) - プスメラさん» コメントありがとうございます!作品説明に書いてある通り、五条悟オチです。応援ありがとうございます。 (2021年2月15日 14時) (レス) id: 315b29eacb (このIDを非表示/違反報告)
プスメラ - ヨッシーさん、この小説は五条悟オチですか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年2月14日 23時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨッシー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/zyoui1/
作成日時:2020年12月23日 10時