裏 ページ10
『そういえば、私に告白したときどうして本名で呼ばなかったの?』
恋人同士になってからは特に訪れるようになったローレンの家。以前はオフコラボするときだけ綺麗にしていた部屋も、今はいつ来ても良いように清潔な状態が常に保たれている。相変わらずテーブルの上に灰皿はあるが。
唐突なAからの呼びかけに、彼女の真横にいたローレンは「え」という声だけを漏らす。その後は視線を右往左往させて、首の裏を掻く。
「本名、好きじゃねぇって言ってたし。恋人じゃないのに名前呼ぶのキモいかなとか思ったりしたんよ」
『いやだから、ローレンに名前呼ばれるの好きって言ったじゃん。変なところで自信ないよね』
「まぁ?今はもう?普通に名前を呼べるし?イチャイチャできますし?なぁ〜A」
『…そうだね』
「んふふっ、相変わらず俺に名前呼ばれんの好きだなぁA。そいえば、俺の声も好きなんだっけ?」
『調子乗るな』
「顔真っ赤なときに言われても怖くないで〜す」
ソファの上での攻防。優勢なのはどう見てもローレンだ。基本的に、ローレンはAに尻を敷かれてることが多いが、こういったやり取りが2人の間に生まれるとAは必ず劣勢になってしまうのだ。殊更厄介なのは、劣勢になっても別に良いと思ってしまえていることなのだが。
腰に回された腕にぐっと力が入り、薄い男の体に抱き寄せられる。耳元に唇を寄せられれば、頭の中に木魂する愛おしい低音。
「A」
『も、良いから。自信ないって言ったの謝るから』
「ん〜?別に怒ってねぇよ、俺もあの時は臆病だったなって自覚してるし。今はお前を可愛がってんの」
『〜っ』
「A、ほんとに可愛い」
何度も名前を呼ばれ、耳朶にも優しく触れられてAはもう限界だと伝えようとしたときだった。視界が反転する。いつの間にか目の前にはローレンと天井だけが視界を覆っていた。
「自分でノっといてマジごめんなんだけど、流石に限界来たわ。良い?」
『ほんとに、ローレンの所為だからね』
観念した様子で両腕を伸ばして首に回せば、一気に顔が近づいてくる。
少し乾燥した唇が合わされば、鼻につんとくる煙の臭い。この匂いはあまり好きではないのだが、この時に感じる匂いだけは、何故か嫌悪感を抱かなかった。
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作者名:ヨッシー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/zyoui1/
作成日時:2023年11月3日 23時