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「で、風邪引いた理由に心当たりは?」
『…イラストの仕事で2徹した』
「馬鹿なん?いや、もっかい言うわ、馬鹿だろ」
『…うす』

「説教すること増えちゃったなぁ。エバさんも呼ぶか」
『オリバーはやめて…マジでやめて』
「いーや呼ぶね。一番怖い人呼んでやろ〜」

ベッドの際に座り、Aの手を握りながら話を続けている。いつもは早口気味で声が大きいが、風邪を引いて弱っている彼女に合わせて、話のテンポも落ち着いて声量も落としている。

「仕事自体は片付いたん?」
『うん。提出し終わって、先方に確認取ってもらってる』
「そ。じゃあ暫くはそっちの仕事は無し?」
『そうだね、修正依頼が無ければ』

「じゃ、治ったらそのまま俺と健康週間でもするか〜。またアイツら呼んでパーティーでも良いけど」
『…説教させる人員増やそうとしてない?』
「…いや?まさかそんなことせんよ、あはは〜」

多分ローレンの中では決定事項なんだろうな、と逃げ場がないことを悟り、Aは観念する。流石に自分が悪いことを自覚しているので、甘んじて受け入れよう。
個人的には、説教されることよりも体調が治らないことの方が嫌だ。どうにかして早く快復していつも通りに戻りたい。



あれだけ自分の理想を押し付けてきたのに、あっさりと娘を手放す母の夢。
叶えたかった夢を我慢し続けた状態で、医者になって人の命を救って、金稼ぎする夢。
愛犬がいなくなってしまう夢。
同期がいなくなってしまう夢。



この調子なら、今回の夢はローレンにフられる夢かもしれない、なんて諦観的な考えがよぎる。見たくないな、眠りたくないな、でも寝ないと快復できないという気持ちと事実の揺り篭に揺られる。

『…ろれ』
「ん?どした?」
『きらいにならないで』
「…何でそう思ったの?」

彼の優しくて、自分を安心させようとする声に泣きそうになる。

『熱出ると、いつも嫌な夢ばかり見るから…今度はろれにフられちゃうって』
「そっかそっか。風邪引くと変な夢見るよな〜わかるわ」

手を握っていない方の掌がAの体を軽い力でぽんぽん、と叩く。泣いてぐずる子どもを泣き止ませるような。

「けどさ、俺がお前のこと大好きなの知ってるっしょ?」
『……うん』
「そこ即答してくれないの気まずいけど羞恥心が勝ったことにしとくわ。で、もし仮にその夢を見て不安になったとしても、俺が何回でもお前の名前を呼んで、教えてやるから」
『何を?』
「Aが好きで堪らないってことを」

【切り抜き】ロレミズ看病話→←いつも独りだったから



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作者名:ヨッシー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/zyoui1/  
作成日時:2023年11月3日 23時

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