いつも独りだったから ページ21
ﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯという機械音を止めて、表示された数字を見れば「38.2」かなりの高熱だった。Twitterで休みを告げれば、すぐにたくさんのリプが返ってくる。リスナーの皆は元気そうで何よりだ。
どうにかして体を起き上がらせようとするも、頭が重すぎてどうにもできない。
『ぺろに…ご飯あげないと』
唯一の家族に朝ご飯を上げなければいけないのに、体が動かない。
何かあったら頼れ、と今のように体調を崩したときローレンに言われたことを思い出す。
『起きてるかな…』
プライベート用の携帯から、チャットアプリで連絡を取ろうとすると、ちょうどローレンからメッセージが来た。「今から家に行く。必要なものある？」「水と薬はあるよ。ゼリーほしいかも」「了解、大人しくしてろよ」という端的なやりとりを終える。
『大人しくって…私のこと子どもだと思ってる？』
「ﾊﾞﾌﾊﾞﾌｯ」
『おはようぺろ…朝ご飯はちょっと待ってね』
「おいすー…かなり弱ってるな」
『ろれ…』
連絡をしてから1時間も経たないうちにローレンが合鍵を使って自宅に来てくれた。真っ先に寝室に来れるぐらいには慣れている。ぺろも嬉しそうに尻尾を振っていた。
「熱何度よ」
『38.2』
「ガチ熱じゃん。ほれ、取り敢えずゼリー食って薬飲め」
『ん。来てくれてありがと…私は平気だから、ぺろのこと見ててほしい』
「……は？お前の看病もぺろさんの世話も両方するが？」
思ったことをそのまま言ったら、どうやら怒らせてしまったらしい。でも何に怒ってるのかよくわからない、頭の重さで思考が儘ならない。
「ま、お前が完治してから説教だなこれ。お前はゼリー食え…ほーれ、ぺろさん餌食おうな〜」
何やら不穏なことを言った後、私の反応も聞かないままぺろを抱っこしてリビングに向かった。その様子見届けて、どうにかして体を起こしてゼリーを食べる。良かった、体は食事を受け付けてる。食べれるうちに食べないと。
「あとこれ冷えピタ買ってきた。つけるぞ」
『うん……つめたっ』
「顔あっつ。流石に高熱だとそうなるか。薬も飲んだし寝ろ〜」
『…ろれ今日の配信は』
「休みにした。元々そのつもりだったし問題ねぇよ」
嘘だ。絶対私の看病するために休みにした。ローレンはそういう人だから、それぐらいわかる。
でも、そこまでしてくれたという事実に、こんな状況ながらも嬉しがってる自分がいた。
風邪を引いても、いつも独りだったから。
『手、繋いで』
「マ？可愛すぎではあるよ」
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作者名：ヨッシー | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/zyoui1/
作成日時：2023年11月3日 23時
