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《13》 ページ14

《蛍》


俺は生まれた時から、どこか人とは違っていた。


詳しくは憶えてない。


ただ、俺の父さんはアル中だった。


母さんは薬に溺れていた。


そんな話を、施設で聞いたことがある。


生まれて間もなくして、俺は捨てられた。


施設の前に無造作に置かれていた時、俺の背中には殴られたようなアザがあったらしい。


3歳くらいになると、俺は他のみんなとは違うことを自覚し始めた。


周りにいる俺の同い年の子はもう言葉を話すのに、俺は3歳になっても言葉を発さなかった。


ようやく話し始めたのは、5歳になるかならないか、それくらいの時。


その時も片言の日本語を、めちゃくちゃな文法で話していたんだとか。


そして、ちょうどその時。


俺は家出をした。


家出…家ではない、施設を抜け出したのだ。


感情なんてなかった。


ただ、自分が嫌になったとか、そんなとこだろう。


俺はいつだってそんな人間だった。


今だけではなく、俺は生まれた時からこのままなのだ。


5歳の俺は、交差点に立った。


信号なんて初めて見たのかもしれない。


そんな時…押された。


大人だ。


故意に押されたことを、その瞬間に自覚した。


道路に倒れ込むと、車通りの多かったその車道は当然のことながら車が俺に向かって走ってくる。


でも俺は、怖いなんて思わなかった。


当たり前だ。


感情がなかったのだから。


でも、声が聞こえた。


「慧!」


たったそれだけ。


誰だ…それは。


俺の名前ではなかった。


そして、誰かにすくい上げられた感触があった。


高校生だった。


名札には、龍。


その漢字だけが、俺の記憶には残った。


りゅう…彼は、頭から血を流していた。


ふと、俺は自分が無傷である事に気づく。


そして、この人が助けてくれたんだ、と心が動いたのがわかった。


その瞬間、ふと歩道を見ると俺を押したであろう男が立っていた。


今になって言える。


そいつは、池田純三郎の息子であった。


俺は、そいつに復讐をしなければ。


制裁を加えるのだ。


龍の存在を消さないために。


俺は、今、戦っている。


…日本刀を、抜いた。

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あいす。(プロフ) - 猫田慧也さん» そんなそんな!ありがとうございます!!褒めていただけるような作品じゃないです〜…!ですね、池田には何としても復讐したいですね…!更新頑張ります!コメントありがとうございました^^* (2018年3月26日 20時) (レス) id: b9cecfea1a (このIDを非表示/違反報告)
猫田慧也(プロフ) - コメ失礼致します!池田大雅、ムカつきますね。蝉、豹、蠍、以外のみんなは、池田に復讐したい。それぞれの話を聞いて、蝉たちが協力する…なんて良い話なんですか!!!応援してます♪ (2018年3月26日 16時) (レス) id: 68ea1b8acf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あいす。 | 作成日時:2017年12月24日 22時

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